よーせんらいふ!
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「雅、今度の休みは空いてるアルか」
「んー?空いてるよ?」
「じゃあワタシとデートアル!」
「はいはい、わかったからはしゃがないの」
「……お前らってさぁ、」
「はい?」
「付き合ってないのに仲良いよな」
「そうですか?」
「同じクラスで雅はワタシの前の席アル。自然と仲良くなったアル」
「普通仲良くなんのって隣の席じゃん」
「隣は野郎だから普通に話すアル。前にちっこいのがいるのが気になってちょっかいかけてたら仲良くなったアル」
「今聞き捨てならないことが聞こえた」
「とりあえず、お前らの出会い聞いてみてーな」
「良いですけど……」
「──であるからしてー」
暇な授業中。
ぼんやり先生の話を聞いていたら、何やら後ろからつつかれた。
「何?」
「消しゴム貸してクダサイ」
「消しゴム?あ、はい」
まだ劉がアル口調じゃなかった時だね。
辿々しい日本語で、消しゴム貸してくれなんて超可愛いよね。
私はいつも、誰かが忘れるかもと消しゴムを2つ所持しているから、その日1日消しゴムを貸していた。
その翌日、
「昨日返すの忘れタ。謝謝」
「ああ、消しゴム。あんた留学生?」
「ソウ。劉偉ネ」
「劉、ね。覚えた。私は雅。よろしく」
「ヨロシク」
「劉大きいよね。バスケとか入らないの?」
「バスケ…」
「私もこの前バスケ部入ってさー。て言ってもマネージャーとしてだけど。2年にあんたくらい大きい人がいるよ」
けど劉は、自分が留学生だから馴染めないんじゃないかって心配してたみたい。馴染めなかったら私が間を取り持ってあげるよーなんて冗談で言ったら、目を輝かせて私の手を握り……
「頼もしいチビネ!」
とりあえず1発殴っといた。
その日に2人でバスケ部行って、紹介して、入部届け出してって流れ。
そして何日か経つと、
「雅、オハヨウ」
「おはー」
「今日も授業……面倒アル」
「……ん!?」
「どうしたアルか?」
「え、いや、劉どうしたの。そのしゃべり方」
「福井から教えてもらったアル。今日本では語尾にアルつけるのが流行ってるって」
(あの福井のちんちくりん!純粋な劉に何嘘教えてんだぁぁ!)
「変アルか…?」
「めちゃくちゃ可愛、似合ってマス!」
ちくしょうめちゃくちゃ可愛い。
消しゴムがきっかけで話した訳だけど、この時は既に結構仲良かったかなー。
あ、そう言えば、入学から半年くらいしてから、劉がものすっごい冗談言ってた。
それは、IHを終えて、もうすぐ学園祭ですよーってくらいの時期だった。
「雅、」
皆が和気あいあいと話す昼休みの時間帯。もちろん生徒は結構いる。
その中で、私の目の前に座る劉は妙に真剣な顔で私を見ていた。
「最近凄く動悸が激しくて、苦しいアル」
「え、大丈夫?」
「福井に相談したら、それはちゃんと伝えろと言われたアル」
「…まあ医者にはちゃんと伝えなきゃね?」
……もしかして、病院行くのが怖いから一緒に来てとかそういうのか?是非行きますよ可愛いから!
「そうじゃねーアル」
「は、そうじゃないって……じゃあどうなの」
手を握られた。
やっぱ2mあるだけあって、手も大きいんだなぁなんて。
「劉?」
「好きアル」
その一言に、教室が静まり返った。
「お前のこと好きアル」
………………えーっと?
「劉、今日はエイプリルフールじゃないよ」
「アホか。そんなん知ってるアルよ」
「もー、冗談でもからかうなんて酷いなぁ」
「冗談でもからかいでもないアル」
「冗談に付き合ってる暇はゴザイマセン」
「だからッ…」
「おーい図書委員!ちょっと来てくれー」
「あ、呼ばれてる。行かなきゃ」
「雅……」
あの時は何がなんだかわからなくて、図書委員の仕事をこなしてたけど……
だって、それなりにモテてる劉が、まさかマネジメントしか取り柄のない私を好きなんてあり得ない!
その時の告白は流れちゃったけど、私が戻ってくると、劉は泣きそうになりながら私をビシッと指差して言った。
「絶対振り向かせてみせるアル」
「いつも振り向いてんじゃん。主に授業中」
「そういうことじゃネーヨ」
「てな訳で仲良くなったよね」
「……劉、お前も報われねーな」
「……一世一代の告白だったアル」
「雅ちんは鈍ちんだからね〜。俺の時も冗談で済ませちゃったし」
「何あんたら。毎日エイプリルフールしてんの?」
「「「…………ハァ……」」」
君と僕が 出会ったきっかけA