よーせんらいふ!
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「雅ちんって、何でそう男ホイホイなの?」
「何そのゴ○ブリホイホイみたいな」
「中学ん時からそうだったし、こっちでも何か周りに男侍らせてるし、この前は室ちん引っ掛けて来ちゃってるし」
「敦クン、君はそんなにお姉さんをビッチに仕立てあげたいのかい?」
「雅ちんは姉ちゃんじゃねーし。て言うか、さっきも何か呼び出しされてたしさぁ」
「さっきの呼び出しは、アンタと劉の現代文の成績が酷いから何とかしろっていう雅子ちゃんのお怒りの呼び出しです。おいコラ劉何そそくさと逃げようとしてんの」
「チッ…」
「しかも、そういう男ホイホイみたいなの無自覚だし。そういうの、いつかしっぺ返し来るよ」
「だから男ホイホイ違う。それより聞いて。アンタ達現代文の成績悪すぎ」
「雅の天然タラシな所も好きアル」
「ヤダ恥ずかしいっ……じゃなくて!ホイホイだかハイハイだか言ってんなら、アンタ達は点数ホイホイになってくださいな」
「無理アル」
「俺理数系は得意だからいーじゃん」
「敦は得意教科とそうじゃないものの点数差が激しすぎるんだよ。劉はまだ日本語文に慣れてないし…」
「雅、ワタシは保健体育の方が苦手アル」
「あ、劉ちんズルいんだけど。俺も保健体育苦手〜。雅ちんが手取り足取り教えてくれたら、点数ホイホイになれるよ」
「よぉし。お前らには今からアゴ先直伝の痴漢撃退用護身術を味あわせてあげよう」
「何だか面白そうな話をしてるね」
「哀れにも男ホイホイに引っ掛かった奴の登場アル」
「男ホイホイ?なんだい、それ」
「知らなくていーよたっつん」
「え、たっつん?何それ室ちんのこと?」
「え?うん。氷室辰也だからたっつん」
「ズルくね?俺なんか名前まんまなのに」
「名前なら良いアル。ワタシなんか名字アル」
「……アイツら、男ホイホイの話からだいぶ反れとるんじゃが」
「知らねぇよ。とりあえず氷室だけ渾名つけられてんのは俺も腹立つ」
「ねーズルい室ちんばっかり」
「だって呼びやすいし。そもそも、名前で呼べつったのアンタだろ」
「慣れればどんな呼び方でも大丈夫アル。ちなみにワタシのことは“ダーリン”と呼ぶアル」
「劉、またアメリカンなホームドラマでも見たんでしょ。日本で男をダーリンなんて呼んでるカップルはすぐ別れます」
「でも岡村と氷室だけ渾名っつーのも贔屓じゃねーか?」
「えー、んー…」
「真面目に受け答えすることないぞ雅」
「でも納得するまで面倒だし…」
「聞こえてんぞちんちくりん」
「あのねぇ、私が名字だったり名前だったり渾名だったりで呼ぶのは意味があって」
「どんな意味?」
「名字で呼んでるのは、福井先輩は後輩として礼儀を弁えた上でだし、劉はこう…響きが良いじゃん」
「……お前、何気に先輩後輩の区切りはちゃんとつけてるもんな」
「響きが良い…!」
「敦は自分から名前で呼んで欲しいって言うからそれを尊重した訳で、それに中学からの親しみを込めて?」
「俺が雅ちんと一緒にいた時間はここの中で一番多いもんね」
「たっつんはホラ、帰国したばかりで友達も少ないし、少しでも早く周りと馴染めるようにね。アゴ村先輩は……まあ、うん」
「何でワシの時だけそうなるんじゃぁぁぁ!!」
「冗談ですって。アゴ村先輩は一番頼りになるし、優しいからついからかいたくなって、その延長線上の渾名というか…?まあ愛故にって奴ですよ」
「雅…!」
「雅が無自覚男ホイホイという意味がよくわかったよ」
「え、結局そこいっちゃう?結構カッコいいこと言ってたんだけど」
「雅ちん好きー」
「で、そう言えば敦と劉は明日から現代文の補講だからね?」
「「……」」
「……やっぱ雅ちん嫌い」
「こればっかりは頂けないアル」
「ちなみに来週の再テストで9割合格したらほっぺにチュウしてあ・げ・るっ」
「劉ちん、一緒に現代文の勉強しようよ」
「そうアルな。とりあえず現代文のハゲ田捕まえてくるアル」
「えっマジになっちゃった?私のチュウごときにそんな……アンタらどんだけ女に飢えてんの。ちなみにハゲ田じゃなくて揚田(あげた)先生だから」
「もういないよ、2人」
「早いのう…」
(……俺も現代文赤点取りゃよかった)
来週のその日、見事満点合格した2人は約束通り頬にキスをさせてご満悦だったそうな。