よーせんらいふ!
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「アツシは、雅とどういう出会いしたんだい?」
「えー、何いきなり」
「いや、同じ中学だって聞いたからな。帝光中は人数も多いのに、よく知り合ったとおもって」
「知りたい?」
「是非とも」
「どーもー。虹村います?」
男バスの1軍が練習してる体育館に、軽やかな声が響いた。
「雅じゃねーか。珍しいな、お前から俺に声かけるなんて」
「好きで声かけたんじゃないけど。あのさぁ、次期主将さんアンタ、部員にどんな教育してんの?」
「あ?何だよ…」
「アンタんとこの部員が女バスの体育館前でお菓子ポロポロこぼしてってんの。ちゃんと犯人とっちめてよね」
「菓子ぃ…?……あ、紫原!オメーか!」
虹村の目に入った紫原は、ちょうどお菓子を食べているところだった。次期主将に見つかっても焦ることなく、というか更にまいう棒をくわえながらのそのそと歩いてくる。
「そんなに落としてた〜?ごめーん」
「敬語使え敬語。私は年上です」
「え、アンタ年上なの?小学生かと思ったし」
「そこに直れデカブツ」
「つーか、何でそんな偉そうなの?俺より弱そうなのにさ」
紫原は、ビニールに手を突っ込んで、新しいまいう棒を取り出した。まいう棒の袋を明けながら、紫原は雅を睨むがそんなのにびびる雅ではない。
逆に睨み返してやった。
「……紫原、コイツは次期女バス主将で、このバスケ部の総主将だ」
「総主将?」
「女バスと男バスどっちもまとめて面倒見てるって事だ。男バスで不祥事起こしたら尻拭いは雅がやるんだから、あんま問題起こすなよ」
「俺、問題なんか起こさないし」
「起こしてんだろ現在進行形で。その菓子溢さないようにしろ」
「んー」
「紫原くん、あんまりお菓子ばっかり食べてると体に悪いよ」
「大丈夫だし。それより、名字長いから名前で呼んでいーよ」
「え?」
「総主将ってことは、それなりに強いんでしょ?俺、自分より強い相手にはちゃんと従うし」
「は?え、?」
「紫原敦。ちゃんと教えたんだから、名前で呼んでよねー、雅ちん」
「……雅ち、!? あのね紫原、私一応先輩なんだけど」
「敦」
「紫ば」
「敦」
「……敦」
「なーに、雅ちん」
にへっと力なく笑う紫原に、雅は怒る気力を失ったようだ。
それどころか、
「何この大きい妖精」
「は?何言ってんだオメー」
「ズルい。男バスばっかり可愛い後輩…」
「さっきと態度違ェじゃねーか」
「可愛いとか言われても嬉しくねーんだけど」
「大型犬みたい。ちょ、頭撫でさせて」
「んー、いーよ」
「屈んでくんないと届かないクッソまじ可愛い髪サラサラじゃねーか羨ましい」
ぽふぽふと頭を撫で、雅は何とも幸せそう────とはいかなかった。
ガシッ
「え」
「次そこら辺に菓子散らばしたら、この髪残らず引っこ抜く」
両手で紫原の頭を掴み、良い笑顔でそう言った。そして、そのままの笑顔でクルッと虹村を見て一言。
「監督不行き届きっ」
まるで語尾にハートがつきそうな明るい声だった。思わず身体を震わせた虹村は、ただ頷いた。
今の言葉の裏には、“紫原が菓子を散らばしたら連帯責任でテメーの髪も引っこ抜くからな”という意味が込められているのが、虹村にははっきり感じられたからだ。
「じゃ、私はそろそろ練習戻るから」
「お、おお…」
「アツシ、」
「何?ちゃんと話したじゃん」
「いや、お前…そんな事言われたのに雅になついているのか?」
「だって雅ちん面白いし。あと、頭撫でられた時、すっげー気持ち良かったんだー」
「へ、ヘェ…」
「俺は背ちっちゃい子は間違って潰しちゃいそうで好きじゃなかったけど、雅ちんはなんか潰しても潰れなさそうだし」
「誰よりも潰れやすそうだけど……あんな華奢な体…」
「いーの。あ、雅ちんだぁ」
「うおっ珍しいな、敦が私より先に体育館にいるなんて。偉い偉い!」
「撫で方雑なんだけど〜。髪ぐしゃぐしゃじゃん」
「結ぼうか」
「結んで〜」
君と僕が 出会ったきっかけB