とうおうらいふ!
□2.5
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「マジかよお前…」
「美術部とか家庭科部とか似合ってんのにな」
「それよく言われるんですよ〜。けど、これでも結構強かったんですからね?」
どうやら彼女、雅は結構なじゃじゃ馬のようだ。持っていた封筒で若松を叩く程度には元気な子だということはわかっていたが、まさか元バスケ部だったとは。
「若松、雅に勝てるもん無うなってしもたなぁ」
「なッ…!バスケなら絶対ェ勝てるッスよ!男だし俺の方が身長あるし!」
「それはどうかな。私、若松に勝てると思うよ」
「んだとコラァ!じゃあ勝負しろ!1on1だ!」
「いーよー。3本先取した方が勝ちね」
「勝ったー」
「負けたッ…」
結果は、雅の勝ちだった。
その場にいた全員が唖然としていた。それもそのはず。バスケにおいて身長があることは、そらだけで有利になる。しかし、バスケ部の中でも大きい方の若松が、160に満たない雅に負けたのだ。
「はっ反則だろ!何なんだよお前のシュート!何であんなんで入るんだ!?」
「反則じゃないもーん。ただ型にハマらないだけ」
「ハマらないったって…」
「私なんかまだ型に近い方だよ?従弟なんか、マジかーってなるくらい自由すぎるんだから」
結んでいた髪を下ろし、ボールをかごに戻した。
「すげーな…」
「お前、そんだけ出来てなんでバスケ部入んねーんだよ」
「さー何ででしょう」
これだけの実力があれば、すぐにレギュラー入り、否スタメンになれるだろう。聞いてもはぐらかすということは、あまり話したくないようだ。あまり追及することでもないということで、その話はすぐに終わってしまった。
「いやぁ、素晴らしい試合でした」
「!?」
「原澤先生、見てたんですか」
いつの間にか帰ってきていた原澤が、自分の髪を弄りながら笑っていた。
「どんな理由にせよ、帰宅部のままでは勿体ない。女子バスケ部で活躍するより、男子バスケ部のコーチをやってもらいたいですね」
「先生は冗談がお上手ですね!私なんかがコーチなんて出来るわけないじゃないですか」
「貴女も随分謙遜しますね。若松くんは期待の新人エースですよ。そんな彼に勝てるのだから、申し分ないです」
「今回は偶然なんで」
マネージャーならともかく、コーチをしてほしいとは雅も部員達も驚いていた。それが監督としての直感なのか、中学時代の部活成績からなのか、あるいはどちらもかはわからない。しかし、監督にそこまで言わせるのだから、雅は自分達が思っているよりも優秀な人材なんだと悟った。
「あ、そろそろ帰らなきゃ。若松、アンタ負けたんだから今度マジバ奢りね!」
「は!?」
「新作シェイクが発売されるから、それでいいよ」
「ちょ、」
「あと補習、明日からだから」
「待っ…!」
「楽しかったよゲーム。そんじゃねー」
颯爽と立ち去った雅。
後に残った部員達は、ただ呆然としていた。