とうおうらいふ!
□3.5
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あれは、まだ2年に進級したばかり頃や。
うるさい女子から逃げるように図書室に来て、適当に面白そうな本を探してた。
「……ん?」
そしたら、奥の方で男女がおってん。
何公共の場所でやらかしとん思とった。
けど、なんか小声やけど言い争っとるだけみたいで、面白そうだから隠れて聞いてみたんや。
「あ、あの、困るんですけど」
「いいじゃん。別に、好きな人とかいないんでしょー?」
「そうですけど、先輩のことも好きじゃないですし。ていうか今日初めて認識しました」
「ひっでー。俺は前から知ってたよ」
どうやら男は女にフラれらしく、それでもしつこく迫っとった。
「愛なんか後からついてくるもんだよ。いーから俺と付き合えって」
「離して下さい…!」
「往生際の悪い女だな…」
さすがに可哀想やと思って、止めに入ろうとした。
けど、
「ぐぇぶッ!?」
一歩踏み出した時には、男は倒れてて、
「あービックリした」
女はいかにも回し蹴りしましたーみたいな体勢でたってて、
その女が、雅やった。
「ちょっと待て。理解できてないのは俺だけか!?」
「は?」
「今のどこに惚れる要素があった!?そこは普通お前が助けてっていう流れだろ!」
「惚れるやろ普通。今時の女は弱々しく言いなりになるだけやけど、雅はちゃうねんで?ちゃーんと自分の芯を持って、好きじゃない奴とは付き合わんっちゅー意志があるんやから」
「なんか良い感じに言ってるけど、お前はなに、そんな暴力女が好みなのか?お前もしかしてMか?Mなのか?」
「失礼やな。ワシはどちらかというと、反抗的な女をむりやり屈服させる方がええ」
「Sだった。とんでもないドSだった!逃げてくれ雅!」
「虫も殺さんような可愛い顔して、軽ーく男を回し蹴りできるっちゅーギャップがええんや」
ペンをくるくると回して、あの日のことを頭の中で再生する。
何度思い出しても、可愛い子だと思ったことは確かだ。それに、今まで見てきた女子とは違う。
難攻不落のようなその子を、堕としたいと願った瞬間だった。