とうおうらいふ!
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「おお、やっぱ季節外れの平日はがら空きやんな〜」
男3人、寂しくプールへ到着。
学校が振替休日で休みになり、体育館整備で部活もないため、今吉、諏佐、若松は暇だと言うことでプールへと繰り出した。
……のだが、
「男3人ではしゃぐってのもな…」
そう。
高校生とは言え、そこら辺の大人よりも貫禄のあるガタイの良い男が3人ではしゃいでいるというのは、端から見ればシュールだろう。
「ナンパでもするか?」
「ナンパ…」
「ピュア松にはまだ早いかもしれへんけどな」
「なんすかピュア松って!ナンパくらい出来ますよ!」
とは言え、若松は今吉が言った通り純情なのだ。以前女子に告白され、恥ずかしさのあまり何も言えずに結果告白した側からフラれるという事件があった。
「今吉は手慣れてそうだもんな」
「どういう事やねん、諏佐。まあ出来るとは思うが、絶対せんで」
「だろうな」
「え、意外っすね」
「何やと」
ピュア松に言われたないわ。
そう言って視線を反らすと、あちこちにカップルが目立つことがわかった。
「さらに惨めっすね、俺ら」
「お、あの子暇そうだ」
「ん?ほんまや。てか、プールに来てまで読書て」
諏佐が指差した先には、ラウンジャー(プールサイドにあるチェアベッドのこと)に身体を預け、白いパーカーを羽織り本を読む女性がいた。
髪で顔は見えないが、スタイルも良いし1人でいるなら誘いやすいだろう。
ということで、
「若松、行ってこい」
「はぁ!?何で俺!?」
「ナンパくらいできるんやろ?」
自分の軽口を憎んだ若松だった。
「よ、よぉ、そこの姉ちゃん、俺と遊ば、ねぇか」
意を決して話しかけては見たが、ナンパの何たるかを知らない若松は、そこら辺のチャラ男ともとれるような台詞を噛み噛みながらも言った。
今吉は少し離れた所で大爆笑し、諏佐は苦笑いだ。
そして言われた本人は、自分に話しかけているも思っていないのかスルーだ。
「な、なぁ、読書なんか、しち、してねぇで、さ」
「しちって、しちって…!ぶふっちゅーかダッサ!いつの時代のナンパ文句やねんそれ!ふ、ふふっ」
「今吉、そんな笑ってやるな」
今吉さん、そのまま笑い転げて窒息してください。
若松は正直にそう思ったと後に語っている。
そして、痺れを切らせた若松は、女性の肩に手を置いた。そしてやっと女性は本から視線を外し、上を向いた。
「「あ」」
声を揃えた若松と女性。
それもそのはず、
「わ、若松…!?」
「藍月テメッ…何してんだよこんなとこで!!」
女性は、自分のクラスメイト、雅だった。今吉の笑い声は止み、諏佐は固まっている今吉を引っ張って若松のところへ向かった。
「偶然だな」
「諏佐先輩、今吉先輩もいらっしゃってたんですか!」
「ほんま偶然やわ〜。お友達と来てん?」
「え、いや、知らない女の子と」
「「「は!?」」」
「同じ桐皇の人なんでしょうけど、昨日の帰りに急に話しかけられて……」
─明日の振替休日、開けといてね!─
─は、─
─10時に駅前集合!じゃーね!─
─え、ちょ、待っ、…………誰、あの人─
「ってな訳で」
「知らねー女子に勝手に約束されてホイホイついんてくんなよ!」
「だって。行かなかったら約束破ったとかなんとか言われるじゃん」
本に栞を挟んで、雅は遠い目をした。
「つか、ソイツは?」
「んー、さっき男の人に話しかけられて、」
─君可愛いね!僕と遊ぼうよ!─
─え、─
─やだーっもうナンパとかはずいー!でも暇してるから遊んじゃうっ─
─あ、いや、僕はそっちの黒髪の子と、─
─この子シャイだから私と遊ばーよっ!てことでもう帰ってもいーよー!─
「で、涼しいからここで本読んでた」
「お前……悲しい奴だな……」
「失礼な」
「まあでも、丁度ええんちゃう?ワシらと遊ばへん?」
「でも、」
「俺らも男3人で寂しくやるより、女の子がいてくれた方が楽しいんだが」
「私はいいんですけど、ただ、」
雅は、目をキョロキョロさせて気まずそうにしていた。
「どうした?」
「……わ、私、」
「?」
「………………泳げないんです……」