とうおうらいふ!

□6.5
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「今吉先輩!!」



キンキンと甲高い声が響いた。



「こないだのアレ、どういうことですか!」

「落ち着けや自分。とにかく別のとこで話さへん?」



教室で騒ぎ立てられるのは傍迷惑だ。
とりあえず今吉は、突然現れた女子を連れて人のいないところへと移動した。



「で、何やっけ?」

「この間、プールにいましたよね」

「おー、おったなぁ」

「その時、どうしてあの子といたんですか!」

「あの子?」



今吉は当然わかっていた。
この女子が言う“あの子”が誰なのか。

しかし、敢えて言わなかった。



「藍月雅……」

「ああ、せやな」

「ッ…何で…!」



何で?

そんなの決まっている。というか、この女子には告白された際に理由を言っていたはすだ。



「前に言ってた好きな子って、あの子なんですか…?」

「せやったら何やねん。お前には関係あらへん事やろ」

「どうしてあの子なんですか!?」

「…………あー、もう、面倒やわ自分」

「え、」

「雅はお前らみたいにキャンキャン煩わしないし、化粧臭くもない。それに先輩後輩としての口の聞き方もしっかりしてて、何より、お前らアバズレとはちゃうねんで」



欲求不満で身体を求めてばかりのお前らとは、何もかもが違う。



「雅はな、素直に可愛らして思える。あの愛らしい笑顔も、恥ずかしそうに目を泳がせる仕草も、柔らかそうな肌も、全てが欲しくなるんや。今までは断ると面倒やから適当に付き合うとったけど、アイツを手に入れるためには女との接触は邪魔以外の何もんでもない」



だから、もう話しかけるな。



「ああ、それと……」

「え、」

「雅に手ぇ出さん方がええで?あの子に何かされたら、ワシも冷静じゃおれへんし……何しでかすかわからんからな」






























泣き崩れた女子を放って、今吉は教室に戻った。クラス中がヒソヒソと自分を見ていたが、そんなことは気にせず自分の席につく。



「何だったんだ?」

「ん?おお、こないだのプールのこと問い詰められただけや」

「モテる男は大変だな」

「止めぇ。雅に変な印象持たれたら、ワシもう生きていけへんわ〜」



そうだ。
彼女を手に入れるためには、自分が女を侍らせてるように見せてはいけない。こんな汚い部分を、見せたくない。

只でさえ近付けないのに、これ以上離れたくない。

窓の外で体育の準備をしている女子の集団に雅を見つけ、自然に笑みが溢れる今吉だった。
 

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