きりさきらいふ!
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「いらっしゃ…………康次郎!今日も来てくれたんだ!」
「ああ」
ああ、可愛い雅…
そんなに愛くるしい笑顔で俺を見て、なんて愛しいんだ。
彼女は新作のケーキをショーケースに並べて、レジに寄り掛かる。
「そんなに毎日ケーキ買って、お財布事情は大丈夫なの?」
「大丈夫だ。雅のケーキは美味しいから、毎日でも食べたくなるんだ」
「やだ嬉しーっ」
ああ、ああ、愛おしい。
その笑顔、俺だけのものにしたい。他の誰にも、お前の笑顔を見せないでくれ。
「そういえば、新作が出来たんだな」
「康次郎が案を出してくれたからね。だから今日はサービスしちゃうっ」
「そう言っていつもサービスしてくれるだろう」
サービスと言って、新作のケーキを5つの他に、ジュレを5つつけてくれた。誰にでもサービスしているんだろうと問えば、「康次郎だけだよ」と笑った。
“俺だけ”
俺だけに、雅は優しくしてくれる。
それなのに、いつも誰かが邪魔をするんだ。
「雅ちゃ〜ん、今日はおじさんの生クリームを飲むかい?ギャハハ!」
「……お隣のおじさん…もう、そう言うこと言わないでくんない?」
「何だい?恥ずかしいのかな〜」
「はぁ…」
困っている。
雅が、俺の雅が───
「止めないか。彼女が困っている」
「お?何だい兄ちゃん。この子の彼氏か?」
「お店の常連客!この人にちょっかい出したらお店の出入り禁止するからね!」
「おー怖!」
中年のブタが…
お前ごときが俺の雅に話しかけるなんて許さない。今はただの“常連客”かもしれないが、すぐに彼女は俺のものになる。
そうしたら、雅で自慰をする事すら許さないからな。
男が出ていき、雅は溜め息を吐いた。
「ありがとう、康次郎。あの人のセクハラ発言には困ってたんだ〜」
「当然のことをしたまでさ。もし何かあったら、俺が相談にのるよ」
「康次郎のおかげで毎日安心して暮らせるね」
「そうか」
俺の、おかげで……
雅が俺を頼ってる。俺がいるから安心だと言っている。
こんな嬉しい事があるだろうか。
「そういえば、康次郎って毎回5個買っていくけど5人家族?」
「いや、家族というか……友人と…」
「シェアハウス?」
「ああ…」
……あの4人が彼女のことを知ったら、きっと興味を持つだろうな。特に花宮と原……
困った。
彼女が俺のものになっても、紹介したら盗られかねないぞ。相当警戒しておかねばな。
「他の4人からも、お前のスイーツは評判が良い。明日も来るよ」
「ありがとーっ」
名残惜しいが、そろそろ帰らねば…
笑顔で手を振る雅に、俺も手を振って店から出た。今日は少し長居しすぎた。花宮にどやされてしまうな。
まあ良い。その分幸せな時間も長く過ごせたし。
明日は、どんな話題を持ってこようか、