大学編 神

□conte 04
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玲が息を飲むのがわかった。グラスを持つ指が震えている。意地の悪い言い方だったかもしれない。でもこいつはこのくらい言わないとわからない。

「キビしいな……」玲がやっと口をひらいた。
「オレは神みたいに優しくねえからよっ」

神なら玲をまるごと包んでくれるし、玲も神に心を許すだろう。自分の後輩はそのくらい器のあるヤツだと藤真は思う。

玲はきっと神を好きになる。仙道を吹っ切れるのはその結果だ。そして、こいつはそれを薄々感じてるから踏み出せないんじゃないか? と思うのは、自分のひとりよがりだろうか──
まったく何でこの一直線な従妹の軌道修正してやってるんだろうと、そんな自分に呆れつつ、藤真は優しく隣の玲を見た。

その時、藤真の電話が鳴った。掛け直させて悪いなと言いながら店の外に出て、何やら話してから戻ってきた。

「オレが神を呼んだ。もうすぐ来る」
「ちょっと……何、勝手なことして」
「神が落ち着かねえと、こっちにも影響があるんだよっ。ハッキリしてやれ」
「だって、まだどうしたらいいか……」
「会えばわかるだろ?」
「む、無責任な……」


しばらくして背後に背の高い人物が立つ気配を玲は感じ、振り返った。ああ、神だ。

神も玲がいると知らされていなかったらしい。驚いた顔をしていた。
藤真は「またな」と出て行く── 玲は今さっきまで藤真が座っていた隣の椅子を神に勧めた。


2週間前のあの日以来であり、電話も出なかったわけで……何だか目を見ることができない。神はカウンター奥にビールを注文してから、玲に向き直った。

「藤真さん、練習終わって帰ったんだと思ってたよ。玲ちゃんはどうしたの?」
「コーチのバイトの帰り。神くんはいつもの自主練? お疲れさま」

自然に話し出せたことにほっとする。週にどのくらいやってるの?と普通に世間話を繰り出す神。いつもと変わらないように見えた。
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