大学編 神
□conte 09
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「アイスコーヒーしかないけど」
ちゃんとコースター付きで出してくれる神。突然の訪問だけど、部屋も片付いている。神を近くで見るようになってから、感心することばかりだ。
そんな神がときおり見せる男らしいところや、率直さ。ふとした時の許してしまえる強引さに、心ときめくことが多々ある。
今だってそう。神からの思いがけない申し出に、どきっとした。そしてそれに何の異論もない自分は……自分からもそれを望んでいるのかもしれない。
「あれ得点王のトロフィー?」
腰ほどの高さの棚の上に置かれていた。
「そう、高3の時のだな。でもあの年、IH行けなかったから……行ったのは陵南と湘北だよ」
ああ、そうだった。それを決める陵南VS海南の最後の数分は自分も見ていた。
「そんな顔しないでよ。もうあのことはとっくに消化してるんだから。それにあれがあったから、今があるんだとオレは思ってるよ。あそこに置いてるのは、自分への戒めや教訓みたいなものかな」
そう言って神は笑みを見せた。そういう傍目には感じさせない神の強さに引きつけられる。何だか息がつまりそうになり、グラスを手に取り、冷たい液体を一口流し込んだ。
「他にもさ、いろいろなことやすべてのことが積み重なって、今、玲と一緒にいるんだと思うんだよね。玲のことが好きになったんだよね」
「私も……」
仙道とのことがなかったら、バスケも、藤真を血の濃さ以上に身近に感じることも、神と知り合うこともなかった。そして神のことを好きになることも。
神が「すべて含めて受け止める」と言った意味がわかったような気がする。
真っ直ぐ受け止めることが出来る人だから。
その強さを持っているから。