大学編 神
□conte 10
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玲の携帯が鳴った。もちろん神から。そして数分後には涼しい顔してやってきた。
「何だか、ふたりとも目つき怖いなあ」
「海南は永遠のライバルだからな! それに元陵南の玲に手を出すなんてよー」
越野は憎まれ口をたたくが、顔は笑っている。「ジンジン、いつから玲ちゃんを?」と福田が聞くと、玲も知らなかった答えが返ってきた。
「仙道がアメリカ行ってどのくらいたってからだったかなあ、藤真さんちで牧さんたちと飲んでたら、玲が相当酔っぱらって乱入してきてさ。牧さんに酒止められてもピシャリとはねつけたり、オレを仙道と間違えて言いたいこと言ってくれるし。胸倉掴んで『NBA行かなきゃ承知しないっ!』とか?」
神と仙道を間違えた……その事実に玲自身が驚く。直後とはいえ、そんなことを既にしていたのかと。
「そんな玲が気になって……惹かれたんだ。きっと仙道が惚れた理由と同じなんじゃないかな。守りたいって気持ちと、逆に守ってもらえそうなとこ?」
クスッと神は笑った。
「…覚えてない……私」
「そりゃそうだろ、あれはヒドかった。もうあんなに飲むなよ? ま、オレがいるけど」
サラッとそんなことを言ってのける。越野あたりが 惚気るな!と怒り出しそうだったが、彼はまったく違うことを口にした。
「ふたりの間でも、普通に仙道の話が出来るんだな。何か嬉しいよ」
「コッシー……」
「ホント安心した」
福田も何も言わずに頷いた。
「フッキー、ありがとね」
「フッキー!?」
「うん、宗一郎がそう呼ぶから、私もそうしようかなって」
「…じゃ、なんでジンジンは『宗一郎』なんだ……ズルい」
玲が席を外したときに、越野は神に切りだした。
「なあ、神、良かった。これ本心だぜ?玲ちゃんのこと心配だったけど、もうそんな必要なくなったな。神なら安心、ってオレらが言う筋合いないか」
「いや、そんなことないよ。ありがとう越野」
玲は愛されてるなあ、と神は笑いながら言う。「でも、玲の愛情は独り占めさせてもらうね」
「 惚気るなっ!」と越野が腹立だしそうに笑って言った。