大学編 三井

□conte 09
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返事なんて、もう決まっている。玲は心もとない手つきで三井の頬にそっと触れた。

「三井さんが好き。……きっと少し前からそうだった」
「少し前って?」

彼女のふりをしたころ、なんだと思う。結局、面倒起こしちゃった。気をつけようと思ったのになとふと思い出し、玲はひとり微笑む。

「何、笑ってんだよ?」

そういって、三井もその大きな手で玲の頬を包み込んだ。

「ったく、冷たくなって……温めてやる」

そして上向かせ、そっとキスを落とす。それは何度も繰り返され、だんだん深くなり、息する暇も隙間もない。そのままなだれこむように部屋にあがった。

短い廊下の壁の左右に何度も押しあてられ、唇を求められる。深く口づけられる。玲の手も三井の背中にまわされ、必死に応える。

三井はシャツを脱ぐと、椅子の上に投げかけた。そして唇を重ねたまま、三井の手は玲のジャケットを肩からはずす。それに従い腕を抜くと、シャツの上に重ね置かれた。
気づくと、奥にあるベッドの前に追い詰められている。トンっと背中を倒された。

三井の唇が耳から首筋にかけて優しく這う。Tシャツを脱ぎすて、玲の体に覆い被さると、そっと優しく抱きしめた。

「三井さん、あったかい」

触れ合っているところすべてから三井の体温が伝わってくる。

「あたりめーだ、熱いくらいだろ?」と不敵に笑う三井。

その笑い方、好き――― 玲は三井の頭を引き寄せ、唇を合わせてきた。

あ……。このシチュエーションが以前にもあったことをふいに三井は思い出した。玲との最初のキス、事故のようなキス、そしてせつないキス……。

あの時は心が痛んだが、今は自分に向けられた甘いキスを味わう。そしてその冷たい体に熱を移すように、隙間なく抱きしめ続けた。

温めるだけだからな、オレ──!
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