三井長編 続編・番外編
□suite 06
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とはいえ、そんなことを考えても仕方がないので、勧められるままに評判がいいというやきとりを味わった。
焼き加減も絶妙で、少し添えられたおろし生姜がアクセントでうまい。何だ、この弾力と噛めば噛むほどうまい串は。そういうと『せせり』っつうんだよと教えられた。タレも女性を意識して、甘めの中にもサッパリ感があり工夫されている。
へえ、なるほどねと感心していると、紫帆の友人たちは紫帆に電話をしたらしい。
「あれー、紫帆出ないよ」との会話が耳に入った。またしても意味もなく余計な考えに思いが至る──
だが、しばらくすると折り返してきたようだ。「ミッチーに代わってって」と紫帆からだという携帯電話を渡された。なんで彼女たちは俺のことをミッチー呼びなんだ?と今さらながらに思いつつ、「借りるな」と店の外に出た。
紫帆の声だ。
「ごめんね、酔っ払いたちがうるさいでしょ?」
「いや、おまえの友達だなって。類友ってやつ」
何だか紫帆の背後が騒がしい。
「……何してんだ?」
「私? 会社の同期のベリーを観に来てんの。来てって頼まれて。一緒にどうって誘ったのに、行かねえって言ったじゃん。来るとは思ってなかったけど」
「ベリー?」
「ベリーダンス!」
ああ、勘弁してくれと断ったんだった。バスケもあるし。それは今日だったのか。そーか、そーかと納得してひとり笑っていると、紫帆に「変だよ? 大丈夫?」と訝しがられた。どうかしていた。
三井が席を外してる間、紫帆の友人たちはとある話題に夢中になっていた。
「ちょっと! ミッチーかっこいいよ!」
「紫帆もすみに置けないなあ」
「あ、そういえば、山岸さん、紫帆とヨリ戻したいみたいだよ?」
「えー、だってー」
彼女たちはヒソヒソ話しているつもりらしいが、宮城と桜木には丸聞こえ。思わず耳をそばだてる。
「まあ、彼、紫帆にプロポーズまでしたんだもんね……」
(プロポーズ!?)
「でも結局はそれが……だからさ…」
(よく聞こえん……)
「ちょっとミッチー、ピンチだよ!」
(マジ!?)