仙道 後半戦
□conte 37
2ページ/2ページ
「指定校推薦狙ってる」
「どこの?」
「S大のマスメディア学科」
「なるほど。で、評点足りるの?」
「ギリギリ。でも英語が4.5以上必要で厳しいんだよね。あとは私も全国。それがあれば学内に私より成績いい人がいても、イケると踏んでるんだけど」
具体的な話に仙道は驚く。玲がコンスタントに勉強して、授業もサボらないことは知っていたし、学業での推薦を意識していることも知っていた。それにマスコミ系の仕事をしたいと言っていたことも覚えている。
「まあ、一般入試じゃ無理だから」と玲は笑うが、こんな話を聞かされては、自分も先を見据えて頑張らないといけないなと仙道は感じた。
そして、どこかフラフラして暢気なところがある自分に刺激を与えてくれるのも玲だと思う。
付き合い始めて一年ちょっとだろうか。
彼女の存在を知ったうえであろうと、今でも度々、女の子からの告白を受けることがある。だがそれに動じることがないのは、そういうところからもきているし、仙道自身も玲がそばにいないということは考えられなかった。
変わらない気持ちを持ち続けていた。玲にもそれが伝わっていると思っていた──
年が明け、学校も始まり、いつもの日常を取り戻してきたころ。さすがに玲の耳にも仙道の噂が届いた。
冬の選抜予選の時、いつも仙道に差し入れをしてくる女の子がいたこと。お嬢様学校で有名な鎌倉女学館の子で人形のようにかわいいらしい。そして試合終わりには必ず待っていて、声をかけていくそうだ。
予選といえば11月。そんなこと全然知らなかった……と玲は思う。そして、今頃そんな話が浮上してきたのにもわけがある。数日前に陵南高校の校門前で、彼女が仙道を待っていたからだ。
小夜子が越野にそのことを聞くと、「ああ、あの子か。ただの仙道ファンだよ。気にすんな」と一蹴された。
仙道もやんわり断っているそうだが、相手はめげないそうだ。越野はそのやりとりを直に見てるし、仙道の玲への気持ちが何ら変わらないことを感じているから、あまり深く取り合わない。
玲も仙道のことを疑っているわけではない。これに近いことは今までいくらでもあった。
だが、キャプテンになってしばらくたち余裕ができたこと。進路のことなどいろいろ考え始める時期であることが重なり、余計な思考が芽生えるのが止められなかった。