大学編 神
□conte 06
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その時、後ろから「えっ!?」という素っ頓狂な声が聞こえた。振り返ると、数メートル背後に清田が間の抜けた顔をして突っ立っている。
「え!? えっ、玲さん? え!? ……神さん?」
神と玲のキスシーンを目の当たりにして、何も知らない清田はわけがわからない。ひとりうろたえている。何で?だって?を繰り返している。
「……そっちこそ、何でノブがここにいるわけ?」
「S谷駅のスポーツショップで偶然藤真さんに会って……神さん、まだ練習してるから覗いてみろよ?って言われたんすけど……まさか」
「……健司にそそのかされたわけね」
「ほんとに覗きになっちゃったね、ノブ?」と神はおかしそうに笑った。
「あの、どうなってるんすか?」
「見たまんまだけど」
「え? おふたりは付き合ってる……?」
「そういうこと……ですね」と玲が答えた。
「今、一生懸命あれこれ考えてるだろ? 『仙道』って名前がココまで出かかってるんじゃない?」
清田は泡食ったように、かぶりをふる。相変わらず素直だなあと玲も笑っていると、神がとりあえず終わらせてくるからと練習に戻っていった。
「驚いた?」
「も、もちろんっすよ。だって玲さんは…あの……」と言葉を濁すが、清田の言わんとすることはわかる。
「そうだよね、うん……私も驚いてる」
玲は練習に戻った神に視線を向けた。心動かされてしまう。どんどん神に気持ちが向いていく自分がわかる。そうなることはわかっていたけれど……思っていた以上に急速に。
だから止まらないって言ったのに。
それを見透かしていたかのような藤真に、少しばかりの恨めしさと感謝を感じつつ、また一心にシュートを放つ神を見つめた。