大学編 神

□conte 11
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ニヤッと笑った玲が、そのまま神の手をベッドに押し付け押し倒した。玲の力は思いのほか強い。テニスの賜物かな、なんて思う。

玲が上から自分を見下ろす。ただそれだけなのに、神は興奮する自分を感じた。
唇を重ね、ゆっくり長いキスを繰り返した。まだ乾ききってない彼女の髪が頬や首をくすぐり揺れる。やがて、腰のタオルに手がかけられた。

「宗一郎の心臓、ドキドキいってる」

玲はいたずらっぽく神を見上げる。
神の優しい目、おだやかな笑顔。包み込んでくれる広い胸。
それらは自分を受け入れ、甘えさせてもくれるけれど、それだけではない。一本芯の通った男らしい一面があることも玲は知っている。玲が神に心奪われることは必然だった。

「宗一郎……ずっとそばにいて……」

玲は思ったことを素直に言葉にした。
そばにいて――― かつて言いたくても言えなかった言葉。
それが合図になったように、今度は神がガバッと起き上がると玲を組み伏せた。バスタオルがはだける。

「離さないよ」

奪うかのような力強い口づけの後、強く抱き締められた。仕掛けたのは玲だったが、神の力の前ではやはりわずかな抵抗は意味がない。強引でありながら、優しい神に、玲は力がぬけていく。あとは神になされるがままだ。



──朝、神が目覚めると玲が自分に抱きついて眠っていた。顔にかかった髪を耳にそっとかけてやる。そのまま柔らかい髪を撫でていると、ギュッと抱きしめたい衝動にかられた。

その時、玲が少し首をふり、「んっ……」と色っぽい吐息を漏らした。そして、よりいっそう神に絡まってくる。
「かわいい」と呟き、神も玲の背中に手を回した。


玲とは仙道の彼女として出会った。その後に 藤真の従妹であることを知る。
そして、藤真と同じ大学に進学したことにより、急速に玲との距離が縮まるが、この時はまだ。それにこんなことになるとは思ってもいなかった。

仙道が渡米してからの、気丈に振る舞いながらも危なっかしい玲。時折見せる不安定さと、脆さに気になってしょうがなくなる。何とかしてあげたいと思うようになる。自分に寄りかかってほしくなる。

そう思ってしまったら、あとは転げ落ちるように彼女に惹かれた。断ち切ろうとしている仙道へのその深い情を、自分に向けて欲しくなる。すべてを含めて彼女を欲しいと思った。

神は玲の髪に顔をうずめ、玲の香りを吸い込む。そしてそっと前髪をはらい、額に軽く口づけた。

昨夜は少し無理をさせてしまったかなと思う。自分のことを必要としてくれる玲に、自分もすべてを与えたくて。人間って煩悩の塊りだな、と神はひとりほくそ笑む。
しかも 神の脇腹のあたりに、玲の柔らかい胸が押し当てられている。足も絡められている。

またまたこっちの煩悩が活発化してきちゃうんですけど、とまだ目を閉じたままの玲を微笑みながら見つめた。

その神の邪まな気配に触されるものがあったのか、玲が身じろぎし、神から体をはずし、背を向けてしまった。
「逃げないでよ」と今度は後ろから玲を抱きしめた。
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