大学編 三井

□conte 01
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その後も快調に飲んでいると、玲が神と仙道を間違えて「NBA行かなきゃ承知しないっ!」と胸倉つかんだり、牧と飲み比べしたあげく、藤真に寄りかかって寝てしまった。

「こいつ、これじゃあ、お持ち帰りしてくれって言ってるようなもんじゃねーか」
「藤真さんには気を許してるんですよ」
「オレにならいいけどよ。マジで危険だ!」
「彼女なら、言い寄ってくる男もいっぱいいるだろうな」
「だから心配なんだよ」
「藤真さん、保護者みたいですね」と神が笑う。

「でもさ、従妹とはいえ、仙道の彼女じゃなければこんなに関わってなかっただろうな……と思うと不思議なもんだな」

藤真は玲を自分のベッドに運んで寝かせた。

「オレらが一緒に飲んでるのも 高校時代から思えば不思議じゃねえ?」と三井が言えば、「それが人の縁だ」と牧が年寄りじみたことを口にし、笑いを誘う。
終電がとうに過ぎた時間であったが、そのまましばらく飲み続けていた。


牧が最初に寝てしまい、藤真もベッドをとられたと文句言いながら、神は軽く片づけてから、それぞれ仮眠をとろうとしていた。三井は歩いて帰れる距離なので、帰ろうとする。
照明を消すと、部屋のカーテンがきちっと閉まってないことに気づいた。これでは朝日がまぶしいだろうと閉めに戻った。

玲を起こさないように、腕を伸ばしたが、アルコールも入ってるせいでよろけてベッドに手をついてしまった。

「わりぃ……」

反動で玲が寝返り打ち、その顔が月明かりに照らされ、三井は目を奪われる。髪が一筋こぼれ落ち、何ともなまめかしい。目が離せないでいたら、玲の目がゆっくり開いた。

上から覆い被さるような体勢の三井と目があい……ヤベェと三井は慌てた。
が、玲はフッと笑って腕を伸ばし、三井を引き寄せると、唇を合わせキスしてきた。優しい強引さで三井のそれに押し当てられる。わずか数秒とはいえ、三井は動けず、なされるがままだった。

そして、間違いなく聞いた。
重なる直前に「アキラ……」と玲が口にしたのを──

ほどなく、力が抜けた玲はそのまま寝てしまったようだ。三井だけ金縛りにあったように彼女を見つめていたが、ハッとして体を起こし、何となく他の3人が寝ていることを確認した。そして、静かに部屋をあとにした。

夜明け前の暗い道を、三井は何ともいえない気分で歩いた。
キスなんて数えきれないほどしてきたが、こんなせつないのは初めてだ。柔らかく、優しいキスだった。が、それは自分に向けられたものではない。

なぜかその感触が……そして、その時の玲の顔が浮かんでしまう。
溜息だけが出てきた。
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