あれから5年後

□conte 17
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あれ、早いお帰りだな、と越野が驚いた。

「まさか、玲ちゃん、来なかったとか……?」
「いや、もちろん来たよ? でも迎えも来ちゃったんだよなー」
「はあ……? あ、もしかして彼氏か?」

仙道の苦々しい笑みは、返事せずともそれを肯定していた。そうか、と越野は言った。

「おまえ、アメリカ行って大人しくなって帰ってきたんじゃねえ? 以前なら奪い返しに行ってただろ。そんなこと昔あったよな」
「どうせなら大人になったって言ってくれよ。それにあの時と立場がちげーよ。つーか真逆だな」
「立場ねえ。物わかりのいい大人のフリしたって、いいことねえぞ?」

プッと仙道が吹き出した。何だよと越野がにらみつける。

「なんか、越野って藤真さんと似てるかもしれねえって思ってさ」
「へ? オレはそれ、褒められたととるぜ?」

物わかりのいいフリ……ただ自分はこれ以上玲を困らせたくない。玲が望まないことをする気はない。けれどもし、玲の意思が少しでも自分にあるなら…残っているならば……自分もはっきりと伝えたい。
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