三井長編 続編・番外編

□suite 12
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けたたましいくらいの音で三井の携帯が鳴り出した。案の定、なんてタイミングで掛けてきやがるんだ!という相手。せっかくその実態のないわりに影響力のある呪縛から解放されたかと思ったところに。

仙道からだった。この間頼んだこと、紫帆さんに伝えてくれました? ときたもんだ。

「あ、忘れてた……」
「そうだと思いましたよ。そこに紫帆さんいますよね?」

なんだ? ヤツは千里眼の持ち主か? ノールックにもほどがある。渋々、携帯を紫帆に渡した。

「え、そうだったんですか? 聞いてませんよ〜」と三井に眉をひそめてみせながら、朗らかな声で紫帆は応じる。
当然三井はおもしろくない。隣にそっと近づき、彼女の膝の上に手を置くも、相変わらず愛想よく仙道と会話しているから、ストッキングの柄に沿って指を滑らせた。



チラリと視線を落とした紫帆は、
「まったく、完全に忘れてたんでしょうね。どうでもいいことは覚えてるくせに」とわざと嫌味のひとつも加えた。

すると、今度は三井の手がスカートの中に侵入してきて、怪しげに動き回る。焦らすようにゆっくりと上にあがってくるので、紫帆は空いている手で三井の腕を押し返そうとするがビクともしない。
「や・め・て」と口パクしながら、逃げるように移動しても、三井の手は執拗に追ってきた。

きわどいところまでサラッと撫で上げられ、紫帆の腰がピクリと揺れた。 それでも何とか仙道の話に相槌をうち、答えようと必死だ。
だが、にこやかに返そうとしても、その笑みは引きつっている。三井はそんな彼女の髪をかき上げ、反対の耳元で囁いた。

「そんな電話、ぶっちぎっちゃえよ」

そしてそのまま首筋に舌を這わせる。胸元にも手が伸びてくる。紫帆は仙道に悟られないよう、息を殺すが、語尾の震えと乱れは隠せない。

「じゃ…すぐ送ります、ね……」
「…はい。…え? いや、そんな……はい、失礼しま、す…」

携帯から耳を離したとたん、押し倒され、その手をベッドに押し付けられた。紫帆は三井を見上げて、睨みつける。

「ちょっと!? 仙道さんにバレてたよっ。『邪魔してワリィ』って笑って言われちゃったよ!」
「ヤツもよくわかってんじゃねーか」
「でも仙道さんが」
「仙道、仙道ってうるせー。おまえはオレを選んだんだろ?」

言い返せないでいる紫帆に追い打ちをかけるように、その唇を三井は塞いだ。




仙道は手にある携帯を切りながら、クックと笑った。賢明に紫帆がごまかそうとするのが、手に取るようにわかった。
もう少し引き延ばしてやれば、三井さん、もっと燃えちゃったかもしれねーな、なんて秘かに思っていると、後ろから声をかけられた。

「彰、三井さん、やっぱり忘れてたんでしょ?」
「まーな。それにあの人、かなりのやきもち妬きだからなあ」


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三井長編・続編 fin
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