仙道 後半戦
□conte 31
1ページ/1ページ
国体合宿、翌朝──
それぞれトレイに朝食をのせて、空いている席についた。「おはようございマス」仙道が座ったのは、藤真と花形の向かい。
その奥には海南勢が座っており、牧が新聞片手にお茶を飲んでいる姿はまるでお父さんのようだと藤真に指摘され、周囲は必死に笑いを堪えていた。
一番最後にやってきたのは湘北。三井と宮城は朝からすでに何かモメており、相変わらず騒がしいコンビだ。流川はその後ろから眠そうについてきている。
9月の連休。まだ暑さは残るが、行楽日和といえる青空が外にひろがっている。
玲はきっと学校でテニス三昧なんだろうなーなどと考えていたから、自然とニヤけていたのだろか。藤真に「何ニヤニヤしてんだ、朝っぱらから」と言われた。
「きっと玲ちゃんのこと考えてる」と福田があっさりと正解を言いあてるので、テーブルについていた肘がガクッと落ちた。
そしてふと顔をあげると、正面に座り食事をする藤真と目があったのだが── ちょうど背後から朝日が差し込んで、透き通るような髪がキラキラひかり、下から見上げる大きな瞳を目の当たりにして仙道は思わず口にする。
「玲……と似てますね。やっぱり」
「うわっ、お前まだ寝ぼけてんのか?」
藤真は食べていたハムをポロッと落とした。
「ちょ、そんな恋愛モードな目で見るな!怖えーな」
「何が似てるのかな? 目かなあ。福田どう思う?」
福田も藤真の目をジーッと見つめてくるではないか。
「おまえら、聞いてるか? 気持ちわりーんだよ。や・め・ろ!」
福田もかなりマイペースだ。それしきのことでは動じない。
「顔もだけど性格も少し。強気なとこ」
ああ、そうかもな、と仙道が頷いていると、そこに花形が興味をもったらしい。
「彼女って、藤真と性格も似てるのか……?」
その恐る恐るの疑問に、隣の藤真は気にくわなそうな視線を送ると、それを察した仙道は言葉を選んでしどろもどろに答えた。
「はあ、サッパリしてるというか潔いというか……」
そこに落ちた福田のひとこと。
「男気ある女、だから仙道みたいのとやっていける」
なるほど。周囲は理解したようだ。
「じゃあ、俺と藤真さんもうまくいくのかな」
何がうまくいくんだよ!と藤真があきれたように言うと、バスケに決まってるじゃないですか、と仙道がニッコリしながら答えた。これには文句を言わず、藤真は食事を続けた。
以前湘北で混合チームを組んだときにも感じた。仙道とは感覚があうというか、リズムがあうところがあり、ゲームメイクをしていて面白いと思った。
ツーカーの流れが作れるところに手ごたえと爽快さを感じる。それが相性がいいってやつなんだろうか。などと藤真が真剣に考えているというのに、ふと耳に入るのは仙道のノロケ話。
「すっごい挑戦的なのに、ふと優しさや弱さを見せられたらドキッとしませんか?」
などど花形たちに訴え、それに彼らも頷いている……。
「叱咤激励する中にも愛があるというか、な」
そう言ったのは長谷川だ。
「やっぱり玲と藤真さんは似てますね」