仙道 大学編

□conte 02
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藤真にボールがわたると歓声の声音が変わる。広告で藤真を知り、その中性的ともいえる外見に惹かれ実物を見にくると、その見た目とうらはらの力強く強気なプレイや、大の男たちに指示や激を飛ばす牽引力にさらなる魅力を感じるらしい。

最近、神につられてシュート練習に力を入れているせいか、外からの決定率がさらに上がったようだ。

「ますますやっかいな人になってきたな」

プライベートでも、と仙道は苦笑い。
第3Qの途中から交代で神がでてきた。

「藤真さんと神の連携か、何か不思議ですね、牧さん」
「ああ、神が敵チームかと思うと複雑だな」

相変わらず、滑らかなフォームできれいなスリーポイントを決める。藤真からのパスで。
そして、観客席の女性たちは、藤真とはまた違った柔らかい雰囲気をもつ神の登場に、新しい好奇の対象を見出したようだ。こちらまで感嘆の溜息が聞こえてくる。

「またA学ファンが増えちまう」

諸星が実におもしろくなさそうに言った。

「せめてバスケは勝たないとな」
「さすが牧さん」
「何、のん気なこと言ってんだ、仙道。今は同じチームってわかってるか?」

そして牧は玲に、どうにかしてくれと目で訴える。その時、またキャーと黄色い歓声があがったと思ったら、藤真がロングショットを決めた。

その後の汗をぬぐう仕草や、周囲と笑顔でハイタッチをかわす姿に女性の視線は釘付けになっている。それに対し、不服そうな3人。

オレならもう少し切り込んでから確実にいく、とバスケで対抗する牧。何で女はああいうのが好きかねえと諸星。やらしーなあ、健司、と玲。

「何かこれといった欠点ねえのかな? 実は九九もあやしいくれーのバカとか」と諸星がこっちを覗きこんで言うけれど……。

「それはないな。少なくとも翔陽はけっこうな進学校だった」
「叔母が言うには成績も悪くなかったそうですよ。悪知恵も働きますしね」

その玲の返答に、男たちは納得しプッと笑う。

「じゃ、女性関係は?」

女はめんどくせーと言ってたのは聞いたことあるけど、具体的にはわからない。これといって浮いた話は聞いたことがない。

「何だよ、ヤりたいほーだいかと思ったぜ。だってよお、男はしたくなるだろー?」と諸星が遠慮なく続けるので、仙道は慌てて玲の耳をふさいだ。
そういう諸星だって、女性からのアプローチが絶えないわけで、それを知っている牧はやれやれとため息をついた。


帰り道、仙道たちと別れてから、諸星は玲ちゃんかわいいなあ、仙道、ずりぃ! とずっと繰り返していた。

「あいつ、悠長に構えて女タラシっぽいのに、意外とひとりを大切にするタイプなんだな」
「らしいな。高1からずっとだって話だ。付き合ってしばらくしてから、藤真の従妹だ と知ったらしいぞ?」

そりゃすげえサプライズだ、と諸星は笑う。そして、明日から彼女と藤真をネタに仙道をからかってやろうと密かに面白がっていた。
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