続・5年後

□Imprevu 2
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非公開の練習。仙道も壁に寄りかかりながら、コートで熱心にショットの確認をするプレイヤーを目に映していた。

「彼、実力的にはどうなんだ?」
「今日の相手には勝てるかな。とは思うけど、『勝てる相手』なんて世の中にいないんでしょ?」
「まあな。でも勝ちをイメージしてやることも大事だぜ? 勝つから楽しーんだ」

だろ?と仙道はいたずらそうな笑みを向けた。

昔からそうだった。仙道は相手が手強いほど、その手ごたえを喜ぶタイプ。それを人は『余裕』と称するけれど、彼は本当に純粋に楽しんでいると思う。

自分もよく仙道のそんな『余裕』を崩してやりたいと少しばかりの邪心を抱く。が、それは間違っているのかな、などと密かに脳裏で展開していると練習が終わったようだ。

「なんか、彰がいると集中できない……」
「オレは何もしてねーぜ?」
「練習からチェックしたかったのに」
「すげえ、言いがかりだなあ」

軽い怒りを含んでななめに睨むと、仙道はいっそう和んだ目を投げかけてきた。これに自分はいとも簡単に籠絡されてしまう。いいように操られ、次の瞬間には些細なことなど記憶の彼方。

抵抗できないこの現象に玲が唸っていると、「玲さん」と声かけられた。


「おつかれさまです。調子はどうですか?」
「いい感じですよ」と彼は汗を拭きながら、そしてチラッと玲の隣の仙道に視線を移した。

仙道は彼の目の中に勝利の色を見た。こういう目をしているときは、きっと彼はこのあとの試合相手に勝てるだろう。

そして実際、勝ったと聞いた。バスケの試合は2日後。おもしれー、こっちも負けられねえなと仙道も目つきを変える。

ま、最後にオレが勝つからだけどな──
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