続・5年後
□Petite visiteuse
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ふいに窓が開けられ、玲がハアーっと息をついた。
「びっくりした…起きたらいないんだもん……」
部屋に入り、下に降ろすと、さっそく仙道の足につかまって立ち上がろうとする。
「すっげえ、かわいいな」
「かわいいけど、大変なのがわかったよ……」
また抱き上げて“高い高い”をしてあげると、声をあげてキャッキャと笑う。
「ちょっと、天井に気をつけて?」
「そうだな、ここじゃ…あ、外、いかねえ?」
「もうすぐお姉ちゃん、戻ってくる時間だよ」
「そっか、もっと早く来ればよかったなあ〜」
玲は仙道がこんなに興味を示してくれるとは思ってなかったので、不思議な面持ちでそのまま戯れるふたりを見ていた。
藤真さんに自慢するから、写真撮って?と言われるままに撮れば、それを嬉しそうにメールする彼。
ちょっとした驚きはあれど、違和感はない。ただ、そこに、単純で都合のよい、楽観的な色合いを帯びた未来を想像してしまう自分がいるだけだ。
曖昧で、まだおぼろげなそれは、それでも玲の胸をいっぱいにしていく。それだけで満たされた。
迎えにきた姉と感動の再会をし、帰っていってしまうと、果たせた任務にホッとする反面、今度は寂しくてしょうがない。
「なんか……ものすごい喪失感……」
「だな。あんな小さいのに、すげぇ存在デカかったな」
「うん、彰がかすんじゃうくらい……」
じゃあ、オレの存在を示そうかなっと後ろから玲を抱き締めれば、ポケットに入れた携帯が震えた。予想通り、藤真からで、『俺のかわいい従姪に手を出すな! 玲で我慢しろ』とあった。
「藤真さんからお許しがでた」
「え? 何の?」
「いや、こっちのこと」
「見せてよ」
「いいから、おいで」