続・5年後
□Festival
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だが、今日一番の歓声はやはり最後の最後で。選手のグッズなどがあたる抽選会の他に、今回から設けられた『オークションイベント』
出品内容は告知されており、事前入札方式で、結果は当日発表。そしてその利益は、発展途上国を中心とした貧しい国々に学校を設立する支援をおこなっているNPOに寄付され、バスケットボールや簡易リングが納められることになっていた。
『選手たちと半日ともに練習する権利』
体力的に大丈夫か?と少し心配になる40代後半の男性が得た。でもそこは昔取った杵柄。「当日に標準しぼって、トレーニングしておきます」と心強い感想を述べ、チームの練習着を受け取っていた。
数々の出品が発表されていく中、最後は『好きな選手に壁ドンしてもらう権利』
男が落札したらどうする!?と冗談を言っていたが、問題なく女性だった。震える声で「藤真さんに……お願いします」という彼女。
「ご指名ありがとう」と茶目っ気たっぷりの振る舞いで前に出てきた藤真だが、「ところで、どーやんの? やったことねえよ」と。
オレたちだってやったことねえよ、と周囲は思ったが、流行語にもなったコレはテレビで見たことはある。
ほら、仙道、見本みせてやれ、と押し出され、見よう見まねで藤真相手に仙道が壁に手をつくと、ギャー!と会場が悲鳴の渦に包まれた。
身長差10センチと少し。互いの頭を傾ける角度が秀逸だった。それにしても……複雑な光景だ。
「なんか、悪くないですね」
「アホ、相手間違えんな」
ハハっと笑って仙道は離れた。
準備万端ということで、今度は本番だ。じゃ、失礼しますとニヤっと藤真が笑顔を見せたかと思うと、おもむろに、憎らしいほどの鮮やかな身のこなしで左手を壁に押し付け、落札者を壁に追い詰めた。
両手を口にあて、その女性は目を見開いて藤真を見上げることしか出来ない。さらに藤真が肘まで壁につけると、へなへなと腰を抜かしてしまった。
「おっと、大丈夫?」
藤真に腕を掴まれ、何とか支えられ、「…あ、ありがとうございます……」としきりに繰り返す彼女に、藤真も「ありがとう。こんなんでいいのかな」と優しく微笑んだ。
そこにマネージャーがやってきて、藤真の耳元でこそりと落札金額を告げた。
「マジ!? うそだろ?」
芯から驚いたような藤真。こっちが腰抜かすぜ、と何か他に出来ることはないかとキョロキョロするが、いい考えが浮かばない。
何か形に残るものを。自分を選んでくれたのだから、自分のもので……。そう思いが至った藤真は、悠然と今着ているユニフォームを脱いだ。
会場が割れんばかりの、本日、最大の絶叫が起こる──
それをものともせず、ユニフォームにサインをし、その女性へと。見事な肉体の造形美を晒したまま、渡した。
「下も要る?」
「い、要りますっ!」
「じゃ、後でね」