仙道 前半戦

□conte 12
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ある日の放課後、越野が教室に戻ってくると、他クラスの顔見知りの男から芹沢さん呼んでくれないかと頼まれた。すぐにピンときた、告白だと。仕方なしに 玲に声かけると、渋々といった感じだが、彼女は教室を出ていった。

つい2,3日前に仙道の気持ちを知ったと思ったらこれだよ、と溜息が出た。まさか玲がこの告白をOKするとは思わないが、いつ状況が変わるかなんてわからない。
そもそも誰か好きな男はいるのだろうか。思い立ったら考えるより行動の越野は、戻ってきた玲を手招きして呼ぶと、彼女は苦笑い。

「コッシー、さっきの人、友達?」

ただの知り合い程度というと、玲はホッとしたような顔をした。親しい人だったら悪いと思ったのだろう。
もしそうだとしてもそれはそれだから、と越野は 玲に言っておく。頭の片隅で仙道のことを思い浮かべながら。

「なあ、 玲ちゃんって好きなヤツとかいねーの?」
「コッシーは?」
「オレはいいんだよっ」
「なんで? よくないよ。知りたいな」

オレはいねえ! と越野は言い切るが、玲は有無を言わさず質問ぜめにしてくる。

「何となく気になるとか、気づくと目で追ってるとか。んー、その人の笑顔や頑張ってる姿見て元気でるとか、自分も頑張ろうとかさ、ないの?」
「 玲ちゃんは? どうなんだよ、そういうの」
「体育館からボールやバッシュの音すると、こっちも頑張らなくちゃって思うよ」
「その程度ならオレだって。 玲ちゃんたちもやってるな。ちきしょー、負けるかって」
「じゃ、両想いだね。私たち」

アハハと笑う玲の視線がグッと上にあがった。

「ふたりは両想い?」

ハッとして振り返ると、背後に背の高いヤツが立っていた。恐る恐るその顔を見ると、ニッコリ笑っている。

「そうだったみたい。じゃ、今日も負けないように頑張るか。仙道もねー」
そう言い残すと、さっさと部活に行ってしまうではないか。

「やっぱり越野はライバルじゃん……」
バ、バカッと越野は慌てる。
「恋愛の話じゃねーよ。って恋愛の話してたんだけど、ごまかされた……それよりどーした?」
「べつに。越野と玲ちゃんが仲良さそうにしゃべってるからさ」

少し不貞腐れ気味の仙道。廊下から見えたらしい。何食わぬ様子を装うが、少しの嫉妬もあってきたのかと思うと笑える。それにしても、今後このふたりに振り回されそうだ、と越野は改めて思った。
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