大学編 牧
□conte 01
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あれから数ヶ月たつ。
変わったようで、何も変わっていない。
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F体大とA学大の練習試合が行われた。藤真に誘われたので、久々に玲も観戦にきてみた。が、どうしても溜息がでてしまう。
ちょっと前までいた人がいない── もういい加減、落ち着いてきたはずなのにやはり気分は浮かない。
気づけば試合も終わっていた。ぼんやり座っているのは玲だけ。周りの観客たちはもう移動を始めていた。
ちょうどそのころ、藤真と牧たちはフロアで挨拶を交わしていた。ふとギャラリーを見回すと、立ち去る人が多い中、微動だにせず座ったままの玲が見えた。
「大丈夫なのか……?」牧が見上げた。
「そろそろいいかなと思ったんだけど、あいつらしくねーな」
「やっぱり欠けちまったものが大きいんだろう」
藤真が下から玲を呼ぶ。それに気づいた玲は、ほとんど人がはけていることにハッとし、立ちあがるとフロアに降りてきた。
「久しぶりだろ?」
「そうだね、ちょっとご無沙汰してました……」
玲が来たのを見て、諸星も会話に混じる。
「オレのこと覚えてる?」
「もちろんですよ、諸星さん。牧さんとのコンビ、息ぴったりですね」
試合は上の空だったのだが、当たり障りない答えをしてごまかした。このあと皆で打ち上げするから来ないか? と藤真に誘われたが、せっかくだけど予定があると玲は断り帰っていった。
「じゃ、玲、明日な」
「やっぱり今日は刺激が強すぎましたかね」と久々にバスケの、しかもF体大の試合を見たことを神は指摘する。
「直後は気が張ってたみてーだけど、しばらく経ってちょっと落ち気味?」
「ああ、なるほど」と牧はうなづく。
「明日、何かあるんですか?」
「鎌倉のじーちゃんの見舞いに。午前中に行って、午後は玲が久々にあっちうろつきたいって。あいつ、オレを運転手にするつもりなんだよ」
「あ、オレと牧さんも明日、久しぶりに海南に顔出すつもりなんですよ。お互い休みなんてなかなかないし。合流しませんか? オレが運転しますよ」
持つべきものは気の利く後輩だ、と藤真はニッコリ笑った。
潮風に吹かれなから、134号を下り、海南の校門わきに車を止めた。途中、ポツリポツリと会話をしながらも、玲はずっと海を眺めていた。そんな玲を藤真もそっとしておいた。
着いたと神に連絡を入れる。
高頭監督に挨拶いいの?と聞くと、自分と玲が行ったら練習の邪魔になると藤真は配慮をみせた。バスケをしてたらふたりの顔を知らないわけがない。
しばらくしてやってきた神が運転を代わろうとしたが、「おまえら疲れてるだろ?」とまたまた藤真らしいところを見せ、神を助手席におしこみ、牧と玲が後ろに座った。
「海南の次は陵南か? 玲が行くっつーならだけど」
「行きたい……皆がいいなら」
「学校巡りみたいですね。翔陽はちょっと遠いけど、湘北とかも行きます?」
「三井がいるわけじゃねーんだし、行くかよっ」
車はそのまま陵南高校に向かった。