大学編 牧

□conte 03
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強気で、潔く、一生懸命。
だが意外と不器用な女が無理していたら……
どうにかしてやりたくなる。
甘えさせてやりたくもなる。

*****


牧は約束の時間より早めに出て、S谷駅のスポーツショップに寄った。A学大に近いせいか、どうも藤真贔屓で困る。
バスケ用品コーナーをはみ出て、藤真と玲のポスターがでかでか貼られている。藤真の来店時の生写真まであった。

商品棚を見ていると、背後から牧さん? と声をかけられた。神と玲だった。

「びっくりしましたよ、ここで牧さんに会うとは」

玲もぺこりと頭を下げてきた。

「ああ、この先でOBがスポーツバーを始めたんでな。今から皆で開店祝いに行くんだが……藤真もいるのか?」
「いえ、玲ちゃんともさっき偶然会ったんですよ」
「私、A学の先にあるテニススクールでバイトしてるんです」

聞いたことあるかもしれない、と牧は思った。仙道から。そうか、ふたりは偶然会ったのか──

神と話している間に、玲は隣のレーンの品を見に行ってしまった。しばらくして神もそちらへ行く。
棚ひとつ向こうの会話が牧の耳に入る。神と玲がシューズのことで何か話しているようだ。すると、どうやら店長らしき人物がふたりに気づいたようで声をかけてきた。

「あ、どうも。ハハ、今日は藤真さんはいませんよ」

さすがA学御用達。神も常連だということがわかる。

「こう見ると、玲ちゃんと神くんもお似合いだね。恋人同士みたいだよ?」

雑談とともに、そんな言葉が牧に聞こえてきた。

「やだな、店長。誰でもかれでもくっつけようとしないでくださいよ」
「オレは光栄だけど? でも藤真さんがなあ」
「許してくれない?」
「なんで健司の許可が必要なんですか〜」

笑い声とともに話も盛り上がる。
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