大学編 牧
□conte 04
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まだ苦しい気持ちを抱えてるのか? それとも、それが気になるオレが苦しいのか。
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練習が早めに終わった日の夕方。牧がK沢公園をランニングしていると、ふと何かの撮影をしているのが目に入る。その横を駆け抜けようとすると、「牧さ〜ん」と呼び止められた。
座ってヘアメイクを施されていたのは玲だった。
「そっか、家 この辺りだって言ってましたよね」笑って手を振ってくる。
牧は足を止めて少し近づいた。ランニングウェアの撮影らしい。今ブームらしいことは周りをみればわかる。
「今日は藤真と一緒じゃないんだな」
「レディースの撮影なんです。夕日をバックにランニング。まあ、健司ならいても違和感なさそうですけどね。」
「顔だけならな」と笑って返す牧。
その後、自分のいつもの量を走り終え休んでいると玲がやってきた。
「走るふりだけで不完全燃焼ですよ〜」
ああ、そうか、彼女はずっとテニスをやってたんだっけと思い当たる。
「今から走るか? 付き合うぞ?」
「このカッコじゃ無理ですよ」
撮影が終わって 私服に着替えてしまっていた。それより、と玲は続ける。
「お腹すいたんで、そっち付き合ってくれません?」
「今度はオレのほうがこんなカッコなんだが」
「ラーメンとか定食屋さんとかですよ。それならOKでしょ?」
麻婆豆腐とか酢豚とかいいなあと誘いかける彼女に、牧も食欲をそそられ、よしっと立ち上がった。
店を出ると、雲行きが怪しくなってきてることに気づく。駅までもつだろうかと思っていると、やはり急に降り始めた。
家はすぐそこだからせめて傘を……と牧は玲の手を掴んで走った。
あっと言う間に本降りになる。
「傘も意味ないな」
「通り雨でしょうから……」
とその時、轟音が鳴り響いた。雷だ。
「風邪をひく。ちょっと時間を潰していけ」
牧は玲をドアの中に引きいれた。