大学編 牧
□conte 07
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テーブルにはパプリカが色鮮やかなサラダ、スモークサーモンと新玉ねぎのマリネ、鶏ササミとアボカドのパスタ。玲が牧の体のことを考えて作ったメニューが並ぶ。
そして向かい合い、泡の立ち上がるグラスを合わせたら……まるで恋人同士だ。
「感じたことを書いていいって言われてますけど、第1回目は健司のことに触れてくれって。よりによって超難題ですよー」
玲がS大のマスメディア学科だということに目をつけて話をくれたそうだ。将来やりたいことに近づけると、とても喜んでいる。ライターのような仕事を望んでいるらしい。
彼女の嬉しそうな顔を見ていると、牧も幸せな気持ちになれた。普段はあまり飲まないワインも美味しく感じた。
そして ふたりは体を重ねる。
これで何度目だろう。
牧は玲が余計なことを考えないように強く抱きしめた。離したくない……から抱きしめる。
自分の気持ちが伝わるように ありったけの優しさを込めて口づける。それに玲も応えるかのように返してくれる。
一方、玲も急速に牧に惹きつけられていた。でなければ、こんなことにならない。
彼の胸の中は暖かい。その日焼けした肌に手を添わせ、そっと指を這わせると、くすぐったいのかその手を捕らえられ、押さえられる。首筋に顔をうずめられ、求められる。
自分を刻み付けたい──
自分なしではいられないように──
そんな自身の欲求に従うかのように熱く押しいってくる牧に玲は何も考えられなくなる。
自分たちはどういう関係なのか。
後ろめたいような疑問はあったが、しかしはかりしれない安堵感があった。
ただ、牧の腕の中にいたい……とそれだけは思った。離さないで欲しい。何も考えられない快楽の中で、それだけはハッキリ感じた。
のけぞった首に口づけられると そこからも熱がつたわってくる。牧の律動が早まる。
そして遠のきそうな意識の中、「好きだ」とささやく牧の声を聞いた気がした──