大学編 牧

□conte 12
1ページ/2ページ


藤真には自分から話すと玲は譲らなかった。

*****


ここ2,3日調子のいい牧に対し、ノらない諸星。飲もうぜ!と牧の家に転がり込んできた。そこへ ちょうど神からの電話。お前も来いと誘うと、1時間ほどで藤真とやってきた。

色気もへったくれもないが 気楽なメンツに酒がすすむ。三井にも連絡したが、明日は試合で朝早いとか。チッと舌打ちする。

「部屋が狭くなるだけだ、そもそも皆デカいし」
「これに数か月前は仙道がいたんだぞ? たまんねーな」

そこから不意に玲の話になった。

「まだ仙道のこと 忘れられねえかなー」と諸星がお決まりのようにつぶやくと、藤真が爆弾を投下した。

「あ、そうだ。あいつ、男いるみたいだぜ?」
「え、そうなの!? マジ〜 」
「でもよくわかんねえんだよ。まだ言えないとか言って煮えきらなくてさ。言えねえってどういうことだと思う? 不倫とかじゃねえよな? って聞いたらそれは否定されたけど」
「彼女の性格から考えて不倫はないでしょう」と神は笑う。

ふ、不倫── そんなことを言われているとは……と牧は驚いた。

「わかんねえぞ? 大人で優しい男に慰められて、その気になったら結婚してたとか」

藤真は500ミリの缶ビールに口をつけたまま、ニヤリと笑う。どんどん展開していく話に牧は何と言っていいのかわからない。グラスの焼酎をあおってごまかした。

「オレがその男だったら、玲ちゃんに走っちゃうなー」

諸星は相変わらず 玲に肩入れしているようだ。略奪愛だの何だの話をエスカレートさせる。

「そんな泥沼に玲ちゃんを踏み入れさせていいんですか?」
「ってか、玲の不倫は確定なのか?」

自分が言い出したくせに 藤真はケラケラ笑っていた。しばらくして、トイレに立った諸星が、ニヤニヤしながら戻ってくるなり牧に詰め寄った。その手には洗面台で見つけたシルバーのバレッタ。

「ま〜き〜、いつの間に彼女できたんだ〜?」

笑い転げていた藤真が目を細めた。そのバレッタに見覚えがある──
最近見た気がする。いつだったか。いや、それより誰のだったか……アルコールの入った頭を無理やり回転させた。

「……まさか、不倫相手ってお前か?」
「……すまん」

へ? と諸星が抜けた声を出す。

「オレから話すべきだったな。すまない」

牧は3人に、特に藤真に黙っていたことを率直に詫びた。いや、オレはいいけど……それより何より驚いたと藤真は言った。
次へ
前の章へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ