大学編 牧

□conte 13
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藤真からのメールを見て
頭が痛くなった。

*****


金曜の夕刻。練習を終えたところで、藤真は玲からのメールに気付いた。 神に近寄りこっそり耳打ちする。

「玲からこのあと時間あるか? って。おまえも早く残りの自主練終わらせて来いよ」
「オレも行っていいんですか?」
「気になるくせに。あ、気になって練習に身が入らねーか?」
「いや、むしろ集中してサッサと終わらせますよ」

神らしい答えだ。玲に待ってると返信し、そして牧にも── 送信した。


合流するころには夜の暗さが増していたが、ここはS谷。ビルの明かり、行き交う車のライト、キャンパス内より外の方がむしろ明るい。
正門の前で玲は待っていた。神もあとから来るけどいーだろ?といちおう断ると、玲はホッとしたような顔をした。

(こいつ、神にフォローしてもらおうって思ってんな)

「で、わざわざどうした?」
「いや、あの、そう改まれられちゃうと……」

座るなり、前置きなんていらねえといった感じで藤真は切り出す。案の定、玲はしどろもどろかと思いきや──

「この間の話の続きだろ? おまえの男の話」
「そう……牧さんの話」
「牧!?」

驚くふりをしてやろーとは思ってたけど、言いづらそうにしてるわりにはストレートに名前を出してきたので、ふいを突かれた。そっか、開き直ってくるか、と藤真はその先の対応策を練る。しかし──

「牧さんなの。この間は言えなくてごめん」
「いや、謝ることはねーけど」
「あの時はまだ……何て言ったらいいかわからない状況で。ううん、わかってたんだけど、まだ牧さんに伝えてなくて。そっちが先かなって」

意外にも殊勝に話し始めた。本当に申し訳なさそうな顔をしている。嘘をついていたようで気がとがめていたらしい。

面白がっていた藤真だが、何だか自分が責めているかのような気分になってきた。
それに子供のころ、玲をからかって泣かせてしまい、あとで母親からこっぴどく怒られたことをふいに思い出す。だからつい仏心を出してしまった。
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