大学編 牧

□conte 13
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「まあ、結局は牧だったからなんだろ? そうじゃなきゃ先にそういう関係にはならねえよ。おまえは」
「うん、そう思う……」と言いながら、グラスを傾けていた玲の手が止まった。ふいに藤真の方に向き直った。

「そういう関係? 先に?? って…どういう……」

あっ、オレとしたことが気が緩んだ、と藤真は思う。昔のことなんて思い出したりしてるから──

「まさか……健司知ってた!?」

知ってたのね、と玲の顔がみるみる赤くなる。 怒ってんのか、照れやきまりの悪さからなのか。怒ってんだろうなーと頭のどこか遠くで思考がまわった。その時──

「牧さんちに忘れ物したのが失敗だったね」と上から神の声がした。

「神! いいところに来てくれた」

知ったのは数日前だから安心しなよ、と神にたしなめられる。牧の家で偶然知ってしまったことも聞かされる。だから、牧にとっても不可抗力だったのだ、と。

(あ、オレが神にフォローしてもらってる)


「思えば、スポーツバー行ったとき、玲ちゃんも牧さんも様子おかしかったよね。今なら納得いくなあ」
「あー、そうか、忘れてた。そうだよなあ、すっかり騙されたぜ」
「それを言うなら私だって騙された。知ってて知らないふりして……」

立ち上がりそうな勢いの玲の肩に大きな手がかかった。牧だった。

「牧、おっせーよ」

それを聞いて、あのな……と額をおさえる。

「なんだ、あのメールは」

見せられた携帯には『玲キターーーーー!いつもの店@S谷』

「実に簡潔だろ? それよりオレ、トイレ。こいつの機嫌直しといて」

玲を泣かせたり、怒らせたりすると母親に説教くらうんだよ、とブツブツ言いながら
藤真は席をたった。

「オレが知らないふりをしてくれと言ったようなものだ」

悪かったなと玲を優しく見下ろす牧を見て、そして、そんな牧に甘えるような視線で訴える玲を見て、神は思った。

(それにしても、いつの間に。さすが牧さん)
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