仙道 後半戦
□conte 39
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3度目はバスケ部の練習試合で。もちろんテニス部は練習が入っている。覗いたときには試合は終わっていた。やっぱりなと戻ろうとすると、背後の会話が耳に届いた。
「仙道さんを待つよね?」
「いい? お疲れさまって言いたいな」
あの子だ……と思う。ちゃんと試合を見守って、最後にねぎらいの言葉をかける、か。
お手本みたい── とあきらめ気味の笑みを浮かべてから、玲はダメだダメだと首をふる。こんなことじゃ本末転倒だと自分を鼓舞するが、漠然とした不安はぬぐいきれない。
体育館の角を曲がると、ちょうど仙道と越野が向こうからやってきた。
「玲、終わり?」
「あ……うん、いや、でもあと1時間コート使えるから、自主練していく……」
「そっか、何か気合い入ってるな」
「そんなんじゃないけど。じゃ、ふたりともお疲れさま」
その玲が来た方向の先に、噂の女の子がいることに越野は気が付き、「気にしてんじゃねえの?」と口にした。
「うーん、それとはちょっと違うような、でもなあ……」
むしろ嫉妬してるのオレの方なんだけど、とか何とか、仙道はブツブツ言っている。
「は?おまえ大丈夫か? そんなんで。玲ちゃん、一直線で強いけどさ、やっぱり心配になるんじゃねーのかなって」
「へえ、越野、玲のこと詳しいな」
バカか、という視線を越野は向ける。
「心配することなんかねえんだけどな」と呟く仙道に、じゃ、ちゃんと態度で示せと諭すと、はいはい、とのらりくらりと仙道は返事した。
玲が自主練を終え、校舎のほうに続く階段を上っていると、最上段に仙道が座っていた。
「なんで…帰らなかったの……?」
「ああ、玲の練習見てた」
自分が見守られてしまった。わけのわからない罪悪感を感じる。
慌てて着替えに戻り、仙道と合流すれば、会話は自然と今日の練習試合のことになり、思わず玲は口にした。
「見れなかったよ。ごめん」
「何で謝んだ? オレだって、玲の試合見れたことなんてほとんどねーよ?」
「まあね、そう言われればそうだね」
何か、玲らしくねえな、どうした? と仙道が聞くが、そんなことないよとしか答えられない。すると、腕をつかまれ、確認したいことあるからと促されて仙道の家に寄ることになった。
「玲、最近よく来るあの女学館の子のこと、気にしてるわけじゃねえよな?」
コクリと頷くと、やっぱそこじゃないんだと仙道は笑みを見せる。
「何で笑うのよ……」
「いや、玲らしいな、と」
「さっき『私らしくない』って言ったの誰? わけわかんない」
ふたりきりになると、いつも強気な玲が少しすねたり甘えてきたりするのが仙道はかわいくてしょうがない。そう、仙道の気持ちは変わらず彼女の方を向いている。
それを玲もわかってくれてると思うのだが、最近の彼女は確かにちょっと変だ。