仙道 後半戦

□conte 43
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夏の全国大会、 陵南は準決勝で敗れた。仙道の最初で最後のインターハイは、ベスト4という輝かしい成績を残した。
全国初出場の高校がここまでのし上がったことで、相当な驚きをもって注目されたが、神奈川県予選を知っている者は納得する。

玲は一回戦で負けた。試合終了後に気づいたことだが、軽い肉離れを起こしていた。
自身の大会後、仙道の応援に行きたかったが、開催地が博多と遠く、また、そのケガの治療、他にも肘も痛めていたので、断念した。


だが、その仙道も今日帰ってくる。迎えに行きたいと申し出たが、仙道の部屋で待っていて欲しいといわれた。
渡されてはいたが、ろくに使ったことのない合鍵。その合鍵でドアを開ける。主が一週間以上いなかった部屋は暑さでムワッとした。

仙道のために掃除したり、キッチンに立ったり。今までしてあげたくてもほとんど出来なかったことをしていると、あっという間に時間がたっていた。

インターフォンが鳴った。玲がいることをわかってて押されたそれ。ドアを開けると、ニッコリと笑った仙道が立っていた。

「おかえり」

「ただいま」と言いながら、やっぱいいよなあ、こういうの、新婚さんみてえとさらに破顔した。

「ベスト4、おめでとう」
「玲もお疲れさま。ケガはどう?」と荷物を床に置き、玲を抱き締めた。

ああ、彰だあと玲もホッとした。何だかわからないけど、涙がこみあげてくる。いろいろなことが一段落したからかもしれない。
仙道もそれに気づき……でも何も言わずに玲の頭を撫でた。

「軽度の肉離れだからもう大丈夫。彰はケガなく帰ってきてくれて良かった」
「1,2週間ぶりだけど、何だかもっと久しぶりな気がするな」
「4月からずっと忙しかったから」

うまそうな匂いがする、と仙道が気が付いた。母仕込みの牛肉の夏野菜炒め。香辛料の香りが食欲をそそる。
したくするからシャワー浴びるよう促すと、嬉しそうに仙道は浴室に入っていった。

今日は仙道の部屋に泊まることにしていた。お風呂あがりに簡単に髪を乾かし、玲はアイスティーを入れた。

「今度は何の香り?」
「カモミール、疲労回復やリラックス効果があるんだよ」

いつも試合前に飲んで寝るんだと言うと、仙道がニヤニヤしている。

「試合って例えられちゃうとなあ」
「違っ!」

仙道は押し倒しそうになるのをごまかすために、玲の洗ったばかりの髪を指に絡めてもてあそぶ……でも逆効果だったみたいだ。
柔らかい髪の手触りに、余計に玲に触れたくなった。
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