仙道 後半戦

□conte 46
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穏やかな新年を迎えた。年末に家族皆が集まったときに、両親から提案がなされた。4月から姉は都内に就職先が決まっており、不規則な仕事柄、部屋を借りるか迷っていた。
玲の進学先も同じく都内。玲は自宅から通うつもりでいたのだが──

それならいっそ、母は父の赴任先についていくから、2人で東京に住んだらどうかと。4人家族で3か所に分散することはないという結論だ。

「健ちゃんの近くにでもしたらどう?」

姉はなるほどという顔をしたが、玲は眉根を寄せる。

仙道は差し当たり東京の実家から大学に通うという。きっと、変わらずバスケで忙しいだろうから、物理的な距離はふたりの関係に大きな影を落とすかもしれない。そういう意味でも東京に住むのは悪くない。

ずっと過ごしてきたこの湘南から離れることには感傷的になるが、家族全員にあらゆる面で都合がいいので、そうすることになった。
小田急か東急線沿線がいいなあと姉はさっそく探し始めた。


年が明けてから、仙道は週末にF体大の練習に参加していた。それでも平日は今までの比にならないくらい同じ時間を過ごせる。 周囲はほとんどが受験直前のため、学校に来ない。

今日は珍しく越野が学校に来たと思ったら、「もう見たかあ?」と意味ありげに玲と仙道のところへやってきた。
これっと差し出されたのは、バスケ雑誌。

「オレ、まだ買ってねえや」

越野はチラッと玲を見た。視線がかちあう── きっと自分は恨めしそうな顔をしているに違いない。

「時間の問題だろ? いいじゃねーか。すっげえよく撮れてるよ」

パラパラとめくる仙道の手がとまり、慌てて数ページもどった。
ア〇ックスの広告ページ。藤真の後ろに背中合わせに立ち、腕を絡ませ振り向いているのは玲だ。
横顔だけど間違うわけない。ピンクのバッシュを履いている。

藤真と一緒にちょっとモデルのバイトするとは聞いていたが、その他大勢の中のひとりかと思っていた。

「恋人同士って感じだな」
「そうそう、そういう設定。あくまで設定ね」
「藤真さんだからいいけど……」

でも藤真だからこそ、余計に照れくさかったんだよね、と玲はホッとしながら言った。

「もっと他のバージョンもある?」
「ん、ホームページにはある、かな」

じゃ、パソコンルーム行こうぜと聞こえるやいなや、腕をとられて連れ出された。
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