仙道 後半戦
□conte 35
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国体準決勝、秋田戦──
秋田はオール山王メンバー。ついに対戦する日がやってきた。土曜日ということもあり、神奈川の各校からも部員の応援が会場に続々と集まってくる。
越野、植草の陵南組も到着し、前で三脚をかまえる彦一に声をかけた。その後ろには魚住、赤木。そこに玲もやってきた。
「あ、病人がこんなとこにいる」とからかうのは植草。
「なあ、あちら、お母さんたちだろ?すぐわかったよ」
周囲と違うオーラを醸し出すその一画に目をやると、翔陽の高野と永野が挨拶している。それに対し上品に美しく振る舞うご婦人たち。異様な光景だ……と赤木は思った。
神奈川の選手たちも応援席に合流してきた。越野達が仙道をつかまえ、思わず話し込んでいると、魚住が「あっちに挨拶に行ったほうがいいんじゃないか?」と促した。
「さすが魚住さん」
仙道が玲の隣に座っていると、藤真と花形と長谷川もやってきた。
「お前、何くつろいでるんだあ?」
「あら、健司ったら意地悪ねえ。うらやましいんでしょう?」
「ちげーよ……」母親相手だと、どうも調子が狂うらしい。
逃げるように、そろそろ行くぞと声をかけた。
「頑張ってね、彰くん」玲の母が笑顔で見送る横で、藤真の母が「あ、玲ちゃん、悪いけどコーヒー買ってきてもらえるかしら?」と言うので、はーいと玲は立ち上がり、会場をあとにした。