仙道 後半戦
□番外編 2
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あちぃ〜と頭から水をかぶり、タオルを取ろうと手をのばすが、空をきる。あれ、あれと手探りしていると、誰かがとってくれた。
ドウモ……と顔を拭いてから目を開けた流川は驚く。てっきりメンバーの誰かかと思っていたのに、そこにいたのは玲だったから。
「あ…センドーの……」
「『彼女』って続くんでしょ?」
「っと、藤真サンのイトコ……」
先をとられて悔しかったのか、流川は言い直した。
「どっちも同じだから。まあ、何とでも」
「……玲…サン?」
何とか聞きかじった名前を思い出そうとしている、その様子が玲の笑いを誘う。負けず嫌いだな、この子。どうりで1年生にして仙道に向かってくるわけだ。
自分も手を洗って向き直ると、まだ流川が何か言いたそうな顔をして立っていた。玲は目線を落としてから流川を見上げ直し、「インハイ前に……」と切り出した。
「仙道と1ON1したでしょ? スゲー楽しかったって言ってたよ」
「………」
「でも、あの時、私、約束すっぽかされたんだよね。学校来ないし、携帯つながらないし」とクスッと笑う。
「スンマセ…ン」
流川が謝ることなんてない。意外に素直なんだ、と玲はおかしくなってきた。笑ったらかわいいだろうに、そう簡単には笑わなそうだ。
ちょっと笑顔を見てみたいかもと、玲は心中ひそかに思いめぐらす。なのに、彼の口から出てきた言葉は―――
「センドー…サンを超える。負けねーっす」
その不意打ちに思わず吹き出してしまう。流川はちょっとムッとしたようだ。
「いやそうじゃなくて、ゴメン、いきなりだったから」
その気持ちわかるからと言うと、流川の方がきょとんとした顔をした。
「私も負けない。仙道に」
その時、後ろから流川を呼ぶ声が聞こえた。振り向くと、湘北の宮城がやってくるのが見えた。
玲に気づき、「仙道の……」と発するのと同時に、流川が「玲サンっす」と言い直すからおもしろい。
「じゃ、練習がんばって。打倒仙道も」と言い残し立ち去る玲を見て、宮城が言った。
「ちっ、俺と身長あんまり変わらねーな、くそっ」
「ま、センパイは……」
「ああ!? なんだあ、流川? 仙道に告げ口するぞ? 彼女と仲良さげに話してたって」
普通に話してただけっす、と流川はプイッと顔をそむけた。
「彼女の鎖骨にくぎ付けだったってよ!」
「うっ…」(それは否定できねー……)
「仙道もヤキモチ妬いたりするのかねえ」
「………」
「おまえ、叩きのめされるな、バスケで」
「……負けねー」