仙道 後半戦

□conte 33
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「わりい、待たせたな」

爽やかな笑顔を振りまいて、藤真が更衣室から出てきた。

「で、コイツもだって?」
「ひどいな、藤真さん。オレのことおまけみたいに。それにオレはちゃんと帰りますから」

玲のお母さんが仙道も夕飯に誘ったのだ。

「叔母さんの料理、久しぶりだなあ。ってか、お前はしょっちゅう食わせてもらってんのか?」

仙道は肯定するように、肩をちょっとあげた。



「今日は久しぶりに健ちゃんが来てくれたから、腕ふるったわよ〜」

玲のお母さんは実に楽しそうだ。

「それにしても、健ちゃんと彰くんが友達なんて ビックリよね」
「友達じゃねえって。ライバルだよ! あーうめぇ」

お手製の焼き豚を頬張りながら、藤真は思いっきり否定した。疲労回復にはビタミンB1、本日のメインはそれを多く含む豚肉料理。

「でも今はチームメイトじゃないですかー」

仙道は大豆のサラダを口にしながら、慌ててとりなす。

「あ、でも叔母さん、こいつがバスケするとこ見たことある? やっぱすげえと思うときあるんだよな。最近、一緒に練習しててさらに思う」

珍しく藤真に褒められて、仙道の食が止まる。
 
「それにオレ、司令塔的なポジションなんだけど、こいつ使いやすいの」
「それオレも思います。欲しいときに欲しいところにパスくれるっていうか。またそれが絶妙で……」
「そりゃ、オレが上手いんだけどな。でも、お前もわかって動いてんだろ?」
「まあ、藤真さんならって」

お互い考えていたことが同じだったんだなと不思議な気分になる。練習中や皆がいるときには、こんな風に改まって口にしないだろう。

「褒めあっちゃって、気持ちわるっ」
「なあに、玲ったら嫉妬しちゃって」と母が笑う。そして、違う!と騒ぐ玲を放置して先を続けた。

「そう、だから、健ちゃんと彰くんが一緒のチームの試合を見たくなってね。姉さんと国体見に行こうって計画してるの」
「母さんも!?」藤真が嫌そうな顔をする。
「栃木でしょ? 姉さん車出してくれるそうよ。で、温泉に一泊しちゃおうって」

どっちが目的なんだかと、玲は呆れていると、玲も行くのよ?と母がひとこと。

「だって学校……」
「その日は風邪ひくの!、玲を連れて行ってあげるっていうのが大義名分なんだから。ね、彰くん?」

アハハと仙道は苦笑い。母親たちにはかなわねーなという藤真の視線に玲は沈黙で同意した。
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