仙道 大学編
□conte 03
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「芹沢さん、今日空いてない? バスケ部の先輩たちが紹介しろってうるさくって」
「え? えっと……」
ごめん、と言おうとしたら、すぐ横から声がした。
「悪いな、彼女、先約あるんだ」
体を起こした仙道に視線を向ければ、彼はひどく驚いた。
「せ、仙道!? 陵南だった仙道!?」
S大は関東4部リーグあたりをさまよっているとはいえ、大学でバスケ部に入るくらいだから、彼も相当バスケ好きなわけで……。
「ビックリした、なんで、ここに……?」
「ああ、ちょっとね」と玲の頭をポンポンとすると、彼は瞬時に理解したようだ。自分の発言を思い出し、やべーという顔をしたが、それよりも玲そっちのけで仙道に話しかけてくる。
その間に女の子がやってきて、こともあろうに玲を合コンに誘ってくるではないか。
「ひとり都合悪くなっちゃって。どうしよう……だめかなぁ……相手はK大なんだけど」
控えめだけど押しが強い。なんで今日に限ってそんな話ばっかなんだ……と心の中で溜息をつくと、それに気づいたバスケ部の彼が助け舟を出してくれた。
「おいおい、彼氏の目の前で彼女を合コンに誘ってるって気づいてるか? ま、俺もやらかしちまったけど」
苦笑いしている仙道と目が合うやいなや彼女は大慌て。
「ゴ、ゴメン。か、彼? スミマセン!」
夕方から練習があるので、仙道は大学に戻るそうだ。玲もコーチのバイトの日。
「だから合コンなんて無理だったからねっ!そもそも興味ないし」
「はいはい。でも誘惑が多いんだなあ〜」
「彰だってどうなのよ?」
オレはバスケで忙しいからさ、としれっと答える仙道。まあ、この手の心配は今に始まったことじゃないのだが。
「健司通して、牧さんにリサーチしちゃうから」とふざけて言えば、「いいよ? オレはさっきのバスケ部の橋本くんだっけ?に聞くから」
「『本橋』くんだよ!……ったく」
練習は8時までだという。玲の方が早く終わる。今日は金曜なので、姉は彼の家に行くと言っていた。きっと帰ってこない。
「終わったら、ウチ来てね」
「玲からのお誘い?」
「うん、夕飯ごちそうするよ」
「それもいいけど、その後もな。それを励みに頑張るか。さ、いこーか」