仙道 大学編

□conte 04
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NCAA男子バスケ最多優勝校であり、日本でも知名度の高いUCLAと、大学ナンバーワンのF体大のチャリティー親善試合が6月に仙台市体育館で行われることになった。
ちょうど来日するデニス・ロッドマンもゲストとして来るらしい。すげえ豪華だよな、と仙道も珍しく興奮していた。

5月の関東大学バスケットボール大会新人戦でめざましい活躍をした仙道は、その試合にも出場させてもらえるらしい。藤真が神と見にいくから一緒に行かないかと誘ってくれた。

「で、牛タン食って帰ろうぜ」

新幹線の中で藤真は寝てしまったので、神と落ち着いて話しが出来た。

「仙道はたくさんスカウトきてただろうけど、F体大選んで正解だったね。こんなチャンス、めったにないよ。藤真さん、オレも出てえ!ってうらやましがってたよ」
「何か、目に浮かぶ……」
「仙道の試合はいつも見にいくの?」
「最近は割と。高校時代はテニスあったから、ろくに見てないんだけどね」

ああ、海南にも練習試合で来てたよなと神は思い出す。玲のスコート姿には目を魅かれた。

まだ卒業して2、3ヶ月なのにずいぶん昔に感じるねなんて笑い合い、大学での専攻のことなどを話していると、あっという間に仙台駅に到着した。地下鉄に乗り換え、体育館に向かう。

コートではアップが始まるとことだった。
あ、彰だ───
いつも通り、淡々とこなしていた。

藤真と神はやはりあちらの選手の動きにくぎ付け。何かを得ようと食い入るように見つめていた。

ここはバスケの試合会場。そこに藤真と玲が一緒にいると周囲の視線が集まってしまう。一緒に写真とって下さいと求められたり、本当に恋人同士なんですか?と聞かれたり。藤真と顔を見合わせた。

「玲の相手はあっちなのにな」



やはり圧倒的な力の差を見せつけられる試合となった。パワー、スピード、高さ、どれも及ばない。合間をぬって、連携プレーで崩し得点するも、相手の攻撃をなかなか止められない。

F体大のセンターは2メートル近い3年生なのだが、その存在はかすんでしまう。流れは終始、相手側にあった。

そんな中で、仙道のテクニックは救いになる。華麗なステップでディフェンスを崩し、7フィートのブロックをダブルクラッチでかわし、さらにスクープショットを放つ。バランスを崩した体勢からも、フィンガーロールで決める。鋭いドライブから一転、ステップバックジャンパーを魅せる。
それだけでなく、どこに目がついてんだ!?というパスでアシストもこなす。

「仙道、スゲーな。パワーでかなわねえなら、技で切り崩しか?」

あきらかに押され気味な中で、少ないチャンスを作り上げ、ものにするので自然と目立った。だが、相手のボールはリングに吸い込まれるように決まっていく。
試合結果は言うまでもない。けれど、本場のバスケを肌で感じることができた。


帰り道、牛タン屋でも、藤真と神はまだ興奮が冷めないらしく、UCLAチームのプレイについて話していた。やはり、向こうのバスケは憧れなんだなと玲は思う。

「実際の話聞きてえから、今度仙道に飲みにいくぞ!って言っとけよ」
「自分で誘ってよ……」
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