仙道 大学編

□conte 10
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別れようって切り出したのは自分なのに。もう会わないって言ったのは自分なのに──

柄を握りしめていた玲の手から傘が落ちた。肩からラケットがはずれ落ち、地面に投げ出される。そんなの構わずそのまま仙道に抱きついた。仙道もそんな玲を包み込むように抱き締めかえした。

広い胸の感触に、その香りに、玲は嗚咽交じりに肩を震わせる。

「悪いな……突然来たりして」

玲は静かに頭を振った。そして玲から手を伸ばし、首を引き寄せ、仙道に唇を重ねた。もうどうしようもない想いをぶつけるように。

終わりにしたはず。
もう明後日には行ってしまう。
そんなこと何も考えられない。

しがみつくようにキスをした。仙道も掻き抱くように玲のその細い肩をとらえた。


──会いに行ったら玲が辛くなるのではないかとずっと抑えてきたが、気づいたら来てしまっていた。会わずにいられなかった。自分がこんな衝動で動く人間だなんて初めて知った。

唇が離れ、玲と目があう。そこには涙があふれ、頬をぬらす。雨もそれを手伝うようにつたっていく。そっと手で拭ってやるも、後から後から流れおちてくる。

もう一度ギュッと玲を胸に抱き締めた。
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