仙道 大学編

□conte 11
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バスタオルに包んだ玲をベッドにそっと下ろした。仙道が玲に口づけようとすると、「だめ……」と唇に手をあてられる。

「玲?」
「だめだよ、もう私たちは別れたの……」

玲は背を向けた。自分の体をかばうようにシーツを引き寄せる。

「……そうだな。でも、オレは玲を愛してる。玲は?」
「それ聞いてどうするの? 何か変わるの?」

仙道を見ようともしないでこたえる。愛してると言いそうになる自分への精一杯の強がりだ。また涙がにじんでくるのを必死で我慢しようとすればするほど、肩が震える。
そんな玲を仙道は後ろから優しく包むように覆った。

「顔見たら帰るつもりだったけど、オレの気が変わった。今、この瞬間、玲を抱きたい。愛したい」

終わりにしようと言ってきたときも、涙を見せなかった玲が泣いている。いつも凛としていた彼女が、自分のために泣くのを初めて見た。それが仙道を突き動かす。

玲に寄り添いたい──
想い合う相手と体を重ねるのは、心を重ね慈しむことでもあると思う。

「オレがどんなに玲を想っているか見せてーんだ」
「余計苦しくなる……」
「いや、幸せにする」
「幸せって……それは未来があるふたりの……」
「だからだろ? たとえ別々の未来だとしても。そのための今だと思わねぇ?」

「……」
「玲、抱くよ?」
「……なんで……最後まで彰のペースに巻き込まないでよ……」

仙道がフッと頬を緩めた。玲は仙道を振り返ると、小さな声で言った。

「……彰、愛してる」

愛してるは言えても、そばにいてとは言えない。ふたりの未来はなくても── それでもいいと思った。


ゆっくりと仙道が入ってくる。与えられる熱に背がしなり、その隙間に仙道は腕を差し入れ、玲をきつく抱き寄せた。そして離れても、見下ろしてくる仙道の瞳の奥は優しく玲を愛おしむ。

いつもそうだった。いつもちゃんと仙道の想いは伝わってきていたことを玲は思い出す。

一度閉じた目をまたそっと開けると、目尻に溜まっていた涙がこぼれた。仙道がそれをぬぐう。

「何の涙……?」
「……幸せだと思って……んっ」

深まる挿入に思わず体が浮く。だが今日は決して激しく突き上げてくるようなことはしない。少しでも玲と長く繋がっていようとするかのように。

緩やかな力強い律動が、幸福の深みへ玲を沈めていく。もう戻れない、戻せない時間の中で。
こうして仙道を見上げることも、この腕の中で眠ることも……もうない。それでもいいと思ってしまう。

今を確かめられれば。
それでいい───
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