仙道 大学編

□conte 12
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空港には両親、F体大関係者、藤真たち、それに越野を始めとする元陵南勢、 田岡先生も見送りにきていた。

「玲ちゃんはやっぱり来ないのか?」

牧が藤真に聞いた。

「ああ、もう行く必要がないとか何とか。よくわかんねーけど」

電話でしか話してないが、玲の声はすっかり落ち着いていた。少し前まで不安定な感じだったが、吹っ切れたようだった。

「空港からどんな顔して帰れっていうの? 想像するだけでイヤ。勘弁してよ〜」なんて玲らしい発言に、ちょっとホッとする。と同時に、オレってけっこうこのふたりに振り回されてんなと笑えてきた。



仙道が藤真たちのところへニッコリ笑ってやって来た。

「何だよ、お前もずいぶん爽やかな顔しやがって」
「いろいろありがとうございました。特に藤真さん、かな?」
「かな?じゃねえ。オレは水面下でもかなり世話してたぜ?」

その答えに仙道は、いつものように苦笑いで返した。そこで藤真が最後の世話焼きだと、仙道の手にあるパスポートをさっと抜き、後ろの余白欄に何かを書きつけた。

『○○社 Demain』

「さすがにパスポートならお前も失くさねえだろ」
「何ですか? これ」
「来月あたり、ここのホームページ見て見ろ。見ればわかる。忘れたらそれでいい」

わかったのか、わからないのか、仙道はハハっと笑って受け取った。そして、他の皆とも挨拶を交わすと、ためらうことなく出国ゲートをくぐっていく。

一度も振り返らなかった。
玲が来るかもしれない……と思っていないどころか、絶対に来ないとわかっているように。
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