大学編 神
□conte 03
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部の練習後、神はいつものようにシュート練に入った。自分に課しているのは500本。これは高校のころから変わらない。
バスケとプライベートはきっちりと分けているつもりだが、自主練の段階にさしかかると、内面が精度に出てしまうようだ。さきほどからリングにボールを弾かれている。
「珍しいな。どうしたんだよ?」
横で休憩していた藤真が不思議そうに尋ねた。
神は苦笑した。
玲に面差しの似た藤真に問われるとは……。玲にそう聞かれているような気がする。
このままやっていてもしょうがない。タオルをとり、神も藤真の隣に座った。
「藤真さん、オレ……玲ちゃんに告白しちゃいました」
見なくても藤真が驚いた顔をするのがわかった。
「それって、昨日? だよな?」
藤真としては、神が玲に好意を持っているのは何となく気づいていた。玲へ向ける眼差しの中にある特別な感情に。自分と同じただの心配でしかなかったものが、いつしか形を変えたようだ。でも玲はまだ……と思いめぐらす。
「藤真さんが今考えたこと、わかりますよ?時期尚早だってことですよね。そう、それ、わかってたんですけど」
衝動的に……と神は自嘲気味に笑った。
正直、自分でも驚いている。自覚はあったが、まだ言うつもりはなかった。
「玲は……?」
「あきらかな拒絶もなければ、もちろん受け入れてくれたわけでも……ないですね」
玲はかなり驚き、そして困惑していた。きっと思ってもみなかったのだろう。というより、彼女の心にはまだ仙道がいるのだろう。それを思い知らされただけな気もする。
「藤真さん」改めて神は呼びかける。
「オレは……仙道のことを忘れられない彼女を好きになったんです。だから、それごと受け止めたいんです」
「神はそれでいいのか……?」
たぶん……昨日、玲は自分に抱き締められたときも仙道のことを思い出したに違いない。唇が触れたときも一瞬の逡巡が伝わってきた。
「どこでどうしてこうなっちゃったんだかって感じですよね」
でも気づいた時には手遅れだったんです、と神は噛みしめるようにはっきりと呟いた。
「はあ……ただでさえバスケっていう共通点つーか? それにお前は身長とかも似通ってるし、ま、中身は全然違ぇけどよ。あいつ思い出させる要素が多くねえ?」
まさに、昨日、思い出させてしまった後だけに、藤真の言うことに肩をすくめる。
「それにさ、お前自身もだよ……キツくねえか?」
「彼女がオレのところに来てくれるなら……いいですよ? オレが何とかするぐらいに思ってますから」
今度は藤真が呆れたように肩をすくめるジェスチャーをした。この神にしろ、仙道にしろ、何で揃いも揃って―――
「お前、モテるんだから、もっと楽な恋愛できるだろーに。バカだな」
「モテるって、藤真さんがそれ言うんですか?」
「だから、オレは今そーいうのめんどくさいんだよっ!」
女はめんどくさいと言いながら、玲のことをしっかり気に掛けている藤真に神は笑みを浮かべた。