大学編 神

□conte 10
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越野と福田と試合会場で待ち合わせをした。ふたりに会うのは3か月ぶりぐらいだろうか。
時々メールのやり取りはしているが、まだ神のことを話していない。福田は神と中学が一緒だし、越野も3年次の国体でチームを組んだこともあるので神のことはよく知っている。だから何の躊躇もない。

「この女の子の多さって、藤真さんと神のせいか?」
「あ、ジンジン、オレらに気づいた」

彼らの口から神の名が出ると、何だか後ろめたいような気がする。玲がA学大の試合を見に来るのは、藤真がいるからだと思っているのだろう。
試合は危なげなくA学の圧勝であった。

「藤真さん、やっぱスゲーな。同じガードとして目標だよ」

高校時代から変わらないことを越野は繰り返す。藤真のことを褒められると少し照れくさい。

「ジンジン、相変わらずのスリーに鳥肌たつ……あれ」

福田が何に反応したのかと思えば、引き上げようとしている神がこちらに笑って手を振っていた。「神、よく気が付いたな」とふたりは不思議そうだった。


駅近くのカフェに座ってからも、ふたりはバスケ談義に盛り上がった。この空気感……懐かしい。
神奈川出身者の話から、そして話題は仙道へ。遠慮しないで、むしろ彼のバスケの状況は知りたいと言ってあったので、越野は話してくれた。だから、心配かけていた分、自分もちゃんと言うべきだ。

「そろそろ神くんから連絡来ると思うんだけど……」

どこかで照れがあり、神くんなんて言ってしまう。

「神? なんで?」
「えっと……」
「何だ?」
「神くんと付き合ってる……」

誰が?と言いかけて、ふたりは目を見開いて玲を見た。

「い、いつから……?」
「2か月ぐらい前? かな」

越野と福田は顔を見合わせた。だからさっき神が手を振ってきたのかと思いあたった。

「ビックリ、だな……」
「うん、ちょっと驚いたけど……神なら納得」

そうだ、神なら。仙道は、今まで通りの玲でいて欲しいから別れたのだ。そのことも知っている神なら。

「それに、何か安心したよ」
「ありがとう。でもコッシーに『安心した』と言われるとは思わなかった。っていうかごめんね、心配かけてたってことだよね?」
「ああ、だって、玲ちゃん一直線だから、踏み外したらかなりマズくねえ?」
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