大学編 三井

□conte 01
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藤真の部屋のインターフォンが鳴った。誰だ? こんな時間に。女じゃないか? と牧たちがコソコソ噂していると、案の定、死角になって見えない玄関から「けんじ〜」という声が聞こえてきた。

女は女だけど……と藤真がいったん顔を見せ、キッチンで水を一杯くんでまた戻る。「ほら、玲、飲めよ」と言うのが聞こえた。

藤真の部屋で牧と神、近くに住んでいる三井で飲んでいた。少し前だったらここに仙道が混じることもあった。
渡米の話が持ち上がり、悩んでいた仙道とここで話した記憶もまだ遠くない。悩んでいたこと……玲のことだ。

「あっれ? 皆さんお揃いで〜」ニコニコしながら玲がやってきた。
一見普通だが──「こいつ、珍しくスゲー酔ってる」と藤真が小声で言う。私にも何かください〜と牧の隣に座った。


焼酎をロックでいこうとするので、牧がせめて何か割ったほうがいいんじゃないか? と止めると、笑みを浮かべながらだが、ピシャリとはねつけて一気に飲んでしまった。

「お前、誰と飲んでた? こんな飲み方してたら隙だらけだぞ? 大丈夫か?」
「周りがうるさいから避難して来たのに〜、健司もうるさい〜」

そりゃそうだろ、こんな美人が酔いつぶれてたら危険だと他の3人は思う。それにしても、酒は強いはずなのにこんなになるなんて、やはり仙道か……

玲は空いたグラスを手でクルクル回して眺めた。氷がカラカラ鳴る。この行き場のない想いはいつになったら溶けてくれるのだろう。
つい、苦しさから逃れるように滅茶苦茶に飲んでしまった。何の解決にもならないとわかっているくせに。

そして、もう一軒行こうとか、送るとかいう男をまいて、藤真の家に逃げ込んだら、ここにいたのは仙道を連想させるメンツ。
でもちょっとホッとする。区切りをつけなくては。皆に心配をかけてる自覚もある。

「今日で……こんなの最後にするから、飲ませてよ……」

俯きながらポツリと言った。

「いい覚悟だな。飲んでいいぞ、付き合う」と三井が言った。
神も「うるさいのは藤真さんだけだから。オレたち紳士だし」と玲のグラスに氷を入れる。

「ここオレのウチだぞ? それに何が紳士だ、お前ら危険! 玲、こいつらに気を許すなよ?」
「アハハ、仙道もそう言ってた。特に三井さん」
「はあ? 何でだよ?」
「さあ?」

仙道のことを思い出して苦しいくせに、サラリと仙道の名を口にする玲。この子は強いんだか、そうじゃないんだか……。ま、どちらにしても、男がほっとかないなと三井は思う。
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