大学編 三井

□conte 03
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Y大学
三井の彼女役をするためにやってきた。
大学によって雰囲気が違うなあと思いながら、教えられた体育館をめざす。近づくにつれ、耳なれた音が聞こえてきた。ドリブルする音、バッシュの摩擦音。

体育館に着いたとはいえ、さてどうしたものかと思っていると、だいたい時間を言ってあったので三井が気が付いて出てきてくれた。

「おう、ここまでわりーな」
「とんでもない。むしろ他の大学見れて面白いですから」
「あ、敬語ナシな」
「そうですね。じゃ、あと三井さん名前は……」
「ヒサシ」


あと15分ぐらいで終わるというから、開け放たれた扉から練習を眺めた。
三井のバスケを見たのは、高2の時のIHを賭けた決勝戦が最初。あとその後の国体で少し。それ以来まともに見るのは初めてだ。

3ポイントを得意としているだけあって、シュートはきれいに弧を描き、リングにふれることなくおさまる。いい音だな、余韻を惜しむかのように玲は目を閉じた。

三井にお疲れさまと声をかけ話していると、すぐに他のメンバーがやってきた。
え? まさか三井の彼女? と囲まれる。その輪の向こう側にマネージャーがいるのがチラッと見えたが、後ろめたい気持ちがあり、あまりそちらを見ないようにした。

「あれ?ア〇ックスの女の子に似てない? あのA学の藤真と出てるさ?」
「おお、似てる! え!?」
「三井、藤真と親しいよな……」
「だから 本人」と三井はなに食わぬ顔で答えた。

「じゃあ、ほ……本物?」

マジで!?と大騒ぎ。デカい男たちが色めき立つさまは異様な光景だ。

「あの、なので、み…寿とのことはなるべくここだけの話にしてくださいね」と玲は話が広がらないよう手をうつ。しかも彼女だと肯定はせずに、親しい間柄であると周りには印象付けた。三井も満足そうにニヤニヤしていた。

「オレのバッシュ、藤真と同じやつ、ほら!」
「だから何だよ!自分だけアピールするな!」
「それにしても、なんで三井なんだあ?」
「ったく、いつの間に」
「なんであいつばっかりモテるんだあああ」

マネージャーは失恋決定だな、という声が聞こえ、玲は申し訳ない気持ちになるが、三井にその気がないのだからしょうがないと自分にいい聞かせた。
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