大学編 三井

□conte 04
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久しぶりに練習が早く切りあがったので、チームの何人かと飲みに繰り出した。
初めのころはバスケの話がメインだったが、酒が入ると徐々に女の話になる。とすれば、やり玉にあがるのは三井だ。

「どうやって口説き落としたんだよ?」
「あんな目の前で会えて、幸せだったなー。いいなー三井は」
「バスケもやる気になるよなあ」
「また会いてえ」

それから、彼女呼べよ!という流れになり、三井は適当にごまかすが、飲む前にバッシュを新調してきたというメンバーが、ア〇ックスの新製品を買ったからサインして欲しいとお願いしだす始末。

「オレのモチベーションアップに協力してくれよお」

少なくとも連絡はしてみないと、この場はおさまりそうにない。三井は玲に電話してみた。すると案外近くにいると言う。背後の野次が聞こえているらしく笑っていた。

「ちょっとお邪魔します。私、三井さんの彼女だしね〜」



玲も元は体育会系の人間である。その場にすぐ打ち解けられた。しかも藤真の従妹でもあるし、話しは尽きない。
見た目とそのさっぱりした性格とのギャップに驚きつつ、すぐに皆、以前からの知り合いのように接し始める。それが三井はだんだんおもしろくなくなってきた。

本当の彼女ではないけれど、自分が一番親しいはずなのに。本当の彼女ではないけれど、他の男と楽しそうに話しをするのさえ──

玲は時々気を遣って、彼女のふりをすることを忘れない。三井のことを「寿」と呼ぶ。それすらも何だか気持ちを逆なでされてしまう。そこへ、打ち解けすぎた一人が爆弾を落とした。

「そういえば、アメリカ行ったF体大の仙道って元カレなんだって?」

藤真の恋人役の子の本当の彼だったと、どこからか聞きかじってきたらしい。玲は動じず、ニッコリしながら答えた。

「アハハ、仙道とは高校が一緒なんです。神奈川の陵南高校。寿の湘北高校の宿敵だったんですよ?」

それで話しは高校のことに移った。さらに玲はテニスの話を持ち出し、仙道のことから上手に話をそらせた。
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