大学編 三井
□conte 07
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練習が終わり、帰宅途中の駅で三井は迷いながらも 玲に電話をした。先日の看病の礼を言うつもりだった。
だが、携帯の向こうからは、ほろ酔いの上機嫌の玲の声。女友達と飲んでいるという。
飲み過ぎを案じると、もう帰りますから大丈夫ですと返ってきた。が、それはそれでまた男に声かけられるんじゃないかと気が気じゃなくなり、無理矢理どこにいるか聞きだした。
玲のことが心配だから……それに声を聞いたら、会いたくなった。この辺りのはずともう一度電話すると、少し一緒に飲みませんかと言うではないか。
店内で近づいてくる三井に「あれ…え!?…湘北の……」と一緒にいた友達が驚いた顔をした。聞けば、その友達は陵南高校の同級生だそうだ。
「ああ、だからか」
「あの決勝見てましたから、そりゃあ覚えてますよ。でも、何でその三井さんが……?」
何と説明してよいか、三井は困った。
「三井さんは健司と親しいから。ちょうど電話もらってね。小夜子もわかると思って誘っちゃった」
小夜子と呼ばれた友達は、自分もテニス部だったという。自然と高校のころの話になる。副キャプテンだった彼女は、玲の頼れる女房役だったようだ。
三井の知らない、玲の高校時代やテニス部キャプテンネタをいろいろ披露してくれるが……そうするとどうしても仙道の名前が出てきてしまう。玲は笑っていたが、三井は少し胸が痛んだ。
帰り際、玲が席を外したときに、小夜子が声を落として話しかけてきた。
「ちょっと久しぶりに玲に会ったんですけど……元気そうですね。 本人は藤真さんや皆さんに助けられたとか、迷惑かけた?とか何とか言ってましたけど……」
三井はフッと口元を緩めた。
「オレは何もしてねえよ。一緒に飲んだ…というか、飲まされたくれーで」
「でも、三井さん、今もわざわざ来てくれたし」
小夜子が意味あり気に三井の顔を覗き込んできた。探るような目で。
「いや、別に、偶然電話したらよ……」
「フフ、いえいえ、ありがたいな〜と思って。帰り、送ってやってくださいね」
そう言って、小夜子はクスクス笑っていた。
玲は最寄り駅からの帰り道も ご機嫌だった。
「小夜子、三井さん来た時、すっごい驚いてましたね」
「それ狙ってたんだろ? あの試合じゃオレは完全に敵だったからな」
「バレました?」
「それに、その敵を迎えにきた彼氏かなんかだと思ったみたいだぜ?」
それは勘違いだけど……いや、迎えにきたは合ってるのか?とにかく玲への気持ちが完全にバレてたと思う。