大学編 三井

□conte 08
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母が東京に出てきたので、玲は藤真と叔母と皆で鎌倉の祖父母の家にきた。
神奈川に帰ってきたの、久しぶりだ。いろいろな記憶が鮮明に蘇る……そんな思い出に浸っていると、「何、ぼんやりしてんだよ。現実を生きろ?」と藤真にくぎを刺された。

そんな藤真はやけに熱心に携帯をいじっているではないか。何しているのかと問えば、『脅迫』と返事が返ってきた。相手を気の毒に思っていると、「ちっ、三井め、裏切る気か!?」との独り言が玲の耳に届く。

「脅迫の相手は三井さん? なんで?」と素知らぬ顔して聞いた。

「今度の金曜に押し切られて合コンに行かなくちゃなんねえんだけど、あっちの要望がオレと三井なんだってよ。先輩たちがさあ、どうしてもF女子大としたいって。だから三井を連れ出そうとしてんだけど、あいつ珍しく断るんだよ」

へえ、珍しく……ね。何のネタでゆするのかは知らないが、健司に脅されたらきっと落ちるな、と玲は思った。



土曜にあれ以来、久しぶりに三井からメールが入った。

『明日、A学大と練習試合だけど見にくるか?』
『健司から聞きました。ところで昨日はどうでしたか?』

そう返信すると、すぐに電話がかかってきた。

「試合、昼からだけど……昨日って?」
「モテモテだったんじゃないですか?」
「…藤真のヤロー……あれはしょうがなく……」
「そうですね。じゃ、そういうことで」 

玲に一方的に電話を切られた。

「何なんだよっ」

あれ以来、玲は何も言ってこない。
ダメなんだろうか―――
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